<J1:清水1-3東京>◇第5節◇29日◇アイスタ

 日本のセンターバックは、オレだ!

 日本代表の東京DF森重真人(26)が、後半12分にFKから頭で合わせ、今季初勝利に導く勝ち越しV弾を決めた。DF吉田麻也(25=サウサンプトン)が左膝を負傷する中、J戦士たちが次々とアピール。その代役筆頭格に、森重が名乗り出た。

 先を見ている余裕はなかった。森重はどうしても、今季初勝利を東京に持ち帰りたかった。「次のことを考えてサッカーをやれる状況じゃない」。1-1の後半5分、相手にPKを与えた直前のプレーで、自身へのファウルを訴えたが「執拗(しつよう)な異議」とされ、今季4度目の警告。次節出場停止が決まった直後だった。同12分、右後方からDF太田の左足FK。弧を描いて大きく曲がる軌道を、頭でとらえた。

 ゴール右に狙いすました置き土産弾。「相手のDFラインがバラバラに下がるというのを、ビデオで見ていた。早めにスタートして(マークを)外せればと思った」と狙いがはまった。次節鳥栖戦(4月6日)でピッチに立つことはできず「5試合でイエロー4枚はよくない。反省すべきこと」と言うものの、もともと勝利への気迫を前面に押し出した激しさが、森重の最大の武器でもある。

 そんな自分を思い出したきっかけが、代表初ゴールを決めた5日のニュージーランド戦だった。ゴール前で体を張れずに失点を許した。本来戦うべき場面で戦い切れず「W杯ではもっとパワーがあって、もっとスピードがある。同じことを繰り返さないためにも、この感覚を忘れないままJでやる」。世界基準を念頭に置いた上で、国内でやれることを考えた結果だった。

 日本代表のMF長谷部主将、DF内田に続いてDF吉田が左膝を痛め、守備陣は不安を抱える中、森重は調子を上げている。「(吉田)麻也には早くけがを治してほしい」と仲間を気遣う一方で、ピッチでは「自分の持ち味を出せればいい」と目の前の戦いに集中する。08年北京五輪でも本大会直前に頭角を現し、定位置を勝ち取った経験がある。海外組が主流になる中、JからW杯へ。できることはまだまだある。【栗田成芳】

 ◆森重の得点

 J1通算12点のうち、頭でのゴールが11点を占める。セットプレーのキックをピンポイントで合わせるケースが多く、FKからが4点、CKからが4点。利き足の右足での得点は1点だけで、大分時代の08年8月24日大宮戦で記録。東京に移籍した10年以降の7点はすべて頭。

 ◆日本代表の負傷者

 長谷部は1月に右膝半月板を損傷し、2度の手術を受けた。現在も日本でリハビリを続けているが、所属するニュルンベルクのフェルベーク監督は今季絶望をほのめかしている。内田は2月のリーグ戦で右もも裏を負傷。肉離れのほか腱(けん)も痛め、現在は所属するシャルケでリハビリに専念。さらに、吉田はニューカッスル戦に向けた練習中に左膝の靱帯(じんたい)を痛め、全治6~7週間と診断。すでに早期復帰を目指し、チームでトレーニングを開始している。