<J1:鹿島1-1浦和>◇第30節◇26日◇カシマ

 首位浦和が鹿島と引き分けて、8年ぶりのリーグ制覇に半歩前進した。立ち上がりに今季初先発のMFマルシオ・リシャルデス(32)がPKを外し、前半39分には先制点を許したが、後半18分に途中出場のMF李忠成(28)が同点ゴールを押し込んだ。2位G大阪との勝ち点差は3に詰まり、優勝争いは大混戦。だが、リードされると慌て、粘り強さを欠く悪癖があった浦和にとっては、チームの成熟を示す価値あるドローだった。

 敗色濃厚の浦和を救ったのはFW李だった。0-1の後半14分にMFマルシオに代わり投入されると、4分後にチャンスが訪れた。MF阿部のシュートをGK曽ケ端がはじいたところを右足で押し込んだ。「こぼれ球に詰める動きは100回以上やっている。そのうちの1回がたまたま今日だっただけ。曽ケ端さんの動きを見る余裕もあった」。状況を冷静に見極めて決めた。

 前半4分にFW興梠が倒されPKを獲得しながら、マルシオのPKは曽ケ端に止められた。12分には、マルシオが流れから得た決定機で決められず、嫌な空気が漂った。前半39分には鹿島MFカイオに決められてリードを許す。だが、この状況からの試合運びに今季の浦和の成長があった。

 首位に勝ち点1差の2位で迎えた昨季のラスト3試合は3連敗だった。3試合中2試合で先制点を許し、残り1試合は先制したものの前半で逆転された。リードされると慌てて攻めに行き、さらに傷口を広げた。だが、この日は崩れなかった。ハーフタイムにペトロビッチ監督は「我慢だ」とシンプルに指示。追い付きたい気持ちを抑え、攻守のバランスを重視した。

 MF柏木は「前に行こうとして崩れなかったのは収穫」と言い、DF槙野は「前がかりになって複数失点していたのが今までの浦和。今日は規律、バランスを崩さなかった」と振り返った。ペトロビッチ監督は「うまくゲームをコントロール出来ていた。いいチームになっている。優勝に1歩近づいたと思う」と褒めた。粘り強くドローに持ち込んだことが、チームの成熟を証明している。

 勝ち取った勝ち点は1で半歩前進。3試合連続勝ちなしで、G大阪には勝ち点5差から3差へと詰め寄られたが、アウェーでの“負け試合”を引き分けに持ち込んだ。優勝するだけの地力は見せた。【高橋悟史】