元日本代表の仙台FW柳沢敦(37)が4日、今季限りでの現役引退を表明した。鹿島時代の00年に史上初の3冠を達成するなど黄金期を支え、日本代表としても2度のW杯に出場。セリエAを含む19年の現役生活にピリオドを打ち、今後は指導者を目指して第2のサッカー人生をスタートさせる。

 日本サッカー界を引っ張ってきた1人が、ユニホームを脱ぐ。引退を表明した柳沢は4日の練習後に会見し、決断の経緯について語った。

 柳沢

 ここ数年、自分が求めるものと実際のパフォーマンスとのギャップに葛藤があった。チームの中で僕が与えられるもの、残していけるものが限界に近づいていると感じていた。

 引退を決意したのは、シーズンが終盤にさしかかった頃だった。11年の仙台加入後はケガにも悩まされ、年齢を重ねるごとに出場機会が減少。11月2日のG大阪戦で歴代単独トップのJ1在籍17年連続ゴールを達成しても、クラブから来季の契約更新を打診されても、思いは揺るがなかった。会見で報道陣から「悔いはないですか」と問われると、すがすがしい表情で「はい」と答えた。

 柳沢

 いつかこういう日が来ると思っていた。とにかくサッカーに対して誠実に向き合って、少しでもうまくなれると信じて努力してきた。多くの(偉大な)先輩方から教わって成長できたと思う。(19年間で)うれしいことも、悲しいことも、たくさんありすぎて(思い出を)1つにするのは難しい。でも、鹿島でタイトルを取った瞬間や、W杯の舞台に立てたことはすごく印象に残っている。

 今後については「サッカーに携わる仕事がしたいし、指導者というのは1つの目標」と明かした。仙台側は、クラブの強化や発展に関わるポストを準備。明日6日の最終節アウェー広島戦後に新たな道を選択するとみられるが「まだ1試合残っている。僕が最後だからではなくて、最後の試合にみんなで勝ちにいくことを願っている」とラストゲーム集中を強調した。残留争いしていた状況を考え、まだ仲間には直接伝えていない。プロ魂と周囲への気遣いを忘れず、誰からも愛された柳沢が静かにスパイクを脱ぐ。【鹿野雄太】<柳沢敦(やなぎさわ・あつし)アラカルト>

 ◆生まれ

 1977年(昭52)5月27日、富山県。

 ◆サイズ

 177センチ、75キロ。

 ◆サッカー歴

 小1で始める。富山第一高では3年連続で国体と高校総体、93、95年に高校選手権に出場。96年鹿島入り。98年2月、オーストラリア戦でA代表デビュー。アトランタ、シドニー五輪代表。W杯は02年日韓、06年ドイツ大会代表。

 ◆栄冠

 Jリーグ通算108点は歴代10位で、日本選手に限れば史上6位。97年Jリーグ新人王。98、01、08年ベストイレブン。

 ◆プレースタイル

 パスを引き出したり、スペースをつくったりする動きに優れる。「FWの仕事は点を取ることだけじゃない」とし、チームプレーを重視。

 ◆家族

 03年12月24日にモデルの小畑由香里と結婚。10年5月に長男、12年12月に長女が誕生。

 ◆カズ

 J2横浜FCのFWカズを尊敬し「姿勢とかやってきたことに大きな刺激をもらってます」。