J2山形は今季勝ち点64(18勝10分け14敗)のリーグ6位から昇格プレーオフ(PO)2連勝の下克上を成し遂げ、4季ぶりのJ1復帰を決めた。天皇杯もクラブ史上初のファイナル進出で、東北勢として81年ぶりの準優勝に輝いた。今季「新風」をクラブスローガンに掲げ、サッカー界に「山形旋風」を巻き起こした1年を総括する。

 山形は前身のNEC山形から、創部30周年の節目をJ1復帰で飾った。FW山崎雅人主将(33)は「全員が同じ方向に向かって、チームために犠牲になって戦えた」と総力戦を強調する。今季リーグ出場がなかったのは、2種登録2選手を除く29選手中3選手(期限付き移籍した1人含む)だけ。まさに「人間力」を結集。それぞれがシステム変更や故障による浮き沈みを味わいながら、全員で支え合って個々の役割を果たした。

 ターニングポイントは9月6日の第30節アウェー水戸戦だった。左太ももを痛めていたFWディエゴが試合直前に戦線離脱。両サイド突破を許す展開に、石崎信弘監督(56)はそれまでの4-2-3-1から今季初めて3-4-3にシステム変更。守備を安定させ、勝ち点3に結びつけた。

 次節以降もこの3バックを継続。故障者続出でDF陣が手薄になったことによる「苦肉の策」が、結果的に幸いした。個々の役割が明確になり、水戸戦以後は13勝1分け5敗(天皇杯、PO2戦含む)の快進撃につなげた。

 システム変更で、先発陣も大きく入れ替わった。フィールドプレーヤーで先発が固定されていたのは、今季唯一全試合出場したMF宮阪を含む5人。7月からの天皇杯を機に、それまでサブに甘んじていた選手たちが活躍し、チャンスをつかんだ。特に3バック変更直後の4回戦鳥栖戦は、当時J1で2位の相手を延長の末に撃破。自信を深めた山崎と川西のシャドー2人、ボムヨンと山田の両ウイングバック、センターバック石井らが終盤の中心選手となった。6月に浦和から期限付き移籍で加入した元日本代表GK山岸の、精神的支柱としての存在も大きかった。

 11年に降格の悔しさを味わった山崎は「今いる選手たちだけでなく、これまで一緒だった選手の思いも背負って戦った。(時に中2日の)天皇杯と日程がきつい中で全員で勝ち取った1年」と振り返った。一方、石崎監督は「できたこと、できなかったことを来年につなげていかなければならない」。J1に戦いの舞台を移す15年、石崎山形の真価が問われる1年になる。【佐々木雄高】

 ◆今季の山形

 J2開幕戦は4季連続黒星スタートとなり、第5節終了時は17位まで沈んだ。第37節まで連勝はなかったが、連敗も少なかった。唯一の連敗は、8位で折り返した2巡目立ち上がりの3連敗。この今季最大の窮地から巻き返し、残り3戦はPO進出圏の6位をキープ。POでは準決勝磐田戦(11月30日)のロスタイムに、GK山岸がCKからJ史上初のGKによる決勝ヘディングシュートも飛び出すなど2連勝でJ1昇格を決めた。天皇杯では東北勢として81年ぶりに決勝に進んだが、J1王者G大阪に1-3で敗れ準優勝となった。