トットナムの韓国代表FW孫興民(24)が、同じアジア人として胸のすく活躍を見せた。

 トットナムは12日、FA杯準々決勝で3部ミルウォールと対戦。米FOXスポーツ(電子版)によると、孫は本拠地ホワイトハートレーンでの試合だったにもかかわらず、アウェーに押しかけたミルウォールのサポーターから、しつように人種差別的なチャント(歌)を投げかけられたという。

 チャントは主にアジア系サッカー選手に対して歌われるもの。孫はボールを持つたびに「DVD!」「ヤツらは3枚5ポンドで売っている」などと連呼された。これは、アジア人が英国で違法DVDを二束三文で売っているとからかうものだ。

 だがミルウォールのサポーターは、チームの勝利を願うのであれば差別的なチャントはやめるべきだった。孫はなんとハットトリックの活躍で、差別主義者たちの口を黙らせた。

 孫は前半41分に左足ミドルでチーム2点目を決めると、後半9分には後方からのパスにうまく右足を合わせて同3点目。5点リードの後半ロスタイムにも左足ボレーでゴール。ハットトリックを決めると会心の笑みで右拳を突き上げた。

 英デーリーメール紙(電子版)は孫の活躍について「よくやった孫興民。(相手サポーターに)言いたいことを、足で示した姿勢をたたえたい」と記した。

 ミルウォールのサポーターは05年にも、当時ウルバーハンプトンに所属していたFW薛■鉉に差別的チャントを歌い、問題となったいわくつきの集団。

 今FA杯5回戦では、ミルウォールに敗れたレスターがイングランド協会(FA)に対し「相手サポーターから自軍選手に対し、悪態、挑発、威嚇があった」と申し入れた。

 そんな無法者たちを足で黙らせた孫興民は格好良かった。

※■は王ヘンに奇

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)