【ウォリック(英国)7日=岡崎悠利】数々の記録を残しても、求めるところは先にある。ラグビー日本代表不動のFB五郎丸歩(29=ヤマハ発動機)は代名詞である武器のキックで現在ペナルティーゴール(PG)成功数トップに立っている。ただし、第3戦を終えても納得の表情は見せない。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC=55)に課されるキック成功率85%という高い基準に近づくため、米国戦で1本でも多くのキックを決める。

 独特なポーズと初戦の活躍で一躍日本のスターとなっている五郎丸は、第3戦のサモア戦(3日)後、キックに関して「まだまだ満足していない。求められているものが高いんでね」と表情を崩さずに話した。サモア戦では8本中6本を成功させたものの、五郎丸に笑顔はなかった。

 今大会ではPGを10本入れており、現時点でランキングトップタイにいる。それでも満足しないのは、ジョーンズHCに課される基準が非常に高いからだ。成功率85%は、ほぼ外さない数字。3試合を終え、ゴールを決めたキックは合わせて21本中15本。成功率は約71%。南アフリカ戦の最後のキック失敗は、既に勝利が決まっており、実質的には失敗とは言えない。それを差し引くと75%。PG成功数で並ぶウェールズ代表SOビガーの成功率は、驚異の100%だ。

 昨季は約81%の成功率を記録していた。他国の選手に比べて試行回数が多いため単純比較はできないが、第2戦のスコットランド戦では比較的中央よりから外す場面もあった。試合後は「僕も機械じゃないんでね。外すときは外しますよ」と話していたが、実力があるだけに、もったいない失敗だった。

 ただ、貢献度は目に見える数字だけでは計れない。初戦では先制のPGを決め、後半30分に五郎丸が右隅へトライした直後の難しいキックも入れた。2点差勝利だけに、あと1本でも外れていれば金星はなかった。サモア戦では前半終了間際にWTB山田が右隅に奪ったトライ後、難しい角度から決めて完全に流れをつくった。外せない場面ほど決めており、初のW杯とは思えない勝負強さが光る。

 1次リーグ終了時点で85%を達成するには、米国戦で19本連続で成功させる必要がある。現実的ではないが、初戦では24得点、第3戦はマンオブザマッチと、勝利した試合は必ず五郎丸の活躍がある。米国戦で85%を記録すれば、日本の強さを証明する3勝目は大きく近づく。