女子75キロ級の渡利璃穏(24=アイシンAW)が五輪代表を確実にした。日本女子で唯一、五輪出場枠の獲得を逃していた75キロ級の渡利は1回戦、準決勝と連勝。2位までに与えられる出場枠を獲得し、決勝も勝って優勝を果たした。女子の代表は強化委員会が決めるが、渡利が代表になるのは確実。史上最強の日本女子チームが、全6階級でメダル獲得を目指す。4選手が出場した男子はいずれも2位以内に入れず、今大会での出場枠獲得を逃した。

 リオ行きがかかった準決勝、渡利の相手は自分より12センチも背が高い175センチのオドンチメグ(モンゴル)だった。一回り大きい相手を果敢に攻め、スピードを生かした低いタックルでポイントを稼ぐ。5-2で破ると「焦らず、落ち着いて動こうと思った」。決勝でもアテネ五輪銀のマニウロワ(カザフスタン)に2-1と逆転勝ち。71キロの体重で、最重量級を制した。

 63キロ級でリオを目指したが、58キロ級から2階級上げた後輩の川井に敗れた。その川井が世界選手権で代表を決め「出場の可能性が0になった」。周囲の勧めもあって、空席だった75キロ級挑戦を決意。1日5食で増量し、昨年末の全日本選手権で優勝。五輪挑戦権を生かし「1つずつチャンスをつかみ取って、ここまで来られた」と振り返った。

 今大会の枠獲得で代表が決まる男子と違い、女子の決定は今月下旬の強化合宿後。「気を抜かず、選んでもらえるように頑張る」と話したが、栄和人強化本部長は「メダルも狙える」と高く評価する。右スネを疲労骨折しながらも「手術をしたら間に合わない」と強行出場した渡利が、代表に選ばれるのは確実だ。

 島根から「五輪で金メダルを」と名古屋市の至学館高に留学。至学館大を経て、今も同大で練習を積む。すでにリオ代表を決めている5選手は全員が至学館大の学生か卒業生。東京に拠点を移した伊調以外は練習も一緒にしている。「刺激になるし、みんな励ましてくれる」。出発前にはメールやLINEに「一緒にリオへ」と届いた。先輩と後輩の思いにも応えた。

 璃穏の名は「穏やかな子に育って欲しい」という理由で付けられた。「リオデジャネイロとは関係ないけれど、因縁は感じます」。全6階級制覇を目指す史上最強の日本女子チームに滑り込み「メダルを取ることに集中したい」とリオでの活躍を誓った。

 ◆渡利璃穏(わたり・りお)1991年(平3)9月19日、松江市生まれ。小1の時に「マット運動だと思って」松江レスリングクラブで競技を始め、松江第一中で全国中学生選手権優勝。至学館高から至学館大に進み、13年全日本選手権、14年アジア大会など63キロ級で優勝したが、リオ五輪最後のイスを目指して昨年末の全日本選手権で75キロ級に転向。163センチ。