プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月8日付紙面を振り返ります。2015年の1面(東京版)は浅田真央の復帰戦Vでした。

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<フィギュアスケート:グランプリ(GP)シリーズ第3戦・中国杯>◇2015年11月7日◇北京◇女子フリー

 元世界女王の浅田真央(25=中京大)がGPシリーズ復帰戦を飾った。ショートプログラム(SP)首位から迎えたフリーは125・75点の3位で合計197・48点。ジャンプのミスが続いたが、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の加点で自己最高に並んだ。SPとフリーで3回転半を成功させたのは10年バンクーバー五輪以来。GPは通算15勝目で、連勝記録も最多の「8」に伸ばした。次戦は27日開幕のNHK杯で来月のGPファイナル(スペイン)進出を狙う。

 名伯楽が「おお!」とうなっていた。浅田の3回転半をリンク脇で見た佐藤コーチは、完成度に思わず声を出した。フィギュアに関わって60年以上の目から見ても、その1本は際立っていた。地元中国の観客には、思わず立ち上がってガッツポーズする人も。出来栄え点の加点は1・86点。14年世界選手権のSPなどに並ぶ自己最高点だった。

 午前の練習から「予兆」はあった。曲をかけての練習であえて回避。直前までに連続で2本決めていた。いい感触を失いたくないために、跳ばない選択をする選手もいるが、近年の浅田にはなかった判断。同コーチは「とっても良い感覚があるのでは。新たな形に挑戦している」と代弁した。

 復帰を決めてからは、リンク外の練習時間を多く取る。重点的に鍛えるのは腕回りと背中。体幹を強化するためだが、さっそく効果が出ている。踏みきり前に体がぶれず、空中での回転速度も速い。「ショートとフリーで跳べたので、今後の試合に向けては自信になる。アクセルはこのままいきたい」。自ら評価した通り、3回転半をともに成功させたのは、10年バンクーバー五輪以来だった。

 もっとも、ミスは課題として残る。昨季からスタート位置につくまでの時間が1分から30秒に短縮されていたが、「勘違いしてました」。33秒を要してしまい、1点の減点に。「今日で良かった。1点が順位を左右することがあるので」と前向きにはとらえた。

 さらにジャンプ。3回転半に続く2連続3回転は、後半のループで転倒。「自分の中でも予想外。それで気持ちが前に前にいって、平常心を保てなかった」と続く3回転ルッツは2回転に。後半には「スタミナと気持ちが合ってなかった」と連続技が1回転フリップのみに終わった。技術より心理面で崩れ、「すごく納得していない。優勝だけど満足してない」との気持ちが先に立った。

 オペラ「蝶々夫人」はソチ五輪シーズンに候補となった作品。1度は断り、休養中に京都で見た芸妓(げいこ)の舞に感銘を受け、「世界で日本の素晴らしさを見てほしい」と日本人の主人公になりきる決断をした思い入れのプログラムだ。次戦に向け、「最初から最後まで通す練習を増やさないと」と改善策は見えている。コーチだけでなく、世界中をうならせる時は遠くはない。

 ◆浅田の3回転半ジャンプ SPとフリーで成功させたのは10年バンクーバー五輪以来。当時はSPでは単独の3回転半は跳べず、連続技として挑んでいた。以降は解禁されたが、昨季まで両方で決めたことはなかった。ともに単独で決めたのは初となる。また単独で跳んだ出来栄え点で1・86点を稼いだのは自己最高タイ。08年4大陸選手権フリー、14年世界選手権SPに並んだ。なお、出来栄え点がマイナスの場合は成功とは見なさない。

※記録や表記は当時のもの