【ヘルシンキ2日=高場泉穂】世界選手権で3季ぶり2度目の優勝を飾った羽生結弦(22=ANA)が、18年平昌五輪での66年ぶりの連覇に向け、吉兆の予感だ。48年サンモリッツ五輪、52年オスロ五輪を連覇したディック・バトン(米国)も前年の世界王者。しかもともにループジャンプの世界初成功者という共通点もある。縁起の良さを追い風に再び金メダルを取ることを誓った。

 王者に返り咲いて一夜明け、羽生はもう来季の五輪連覇を見つめていた。「65年前のディック・バトンさんも(五輪の)ディフェンディングチャンピオン、ワールド王者として(2度目の五輪に)臨んだ。そういった意味では、すごくいい験かつぎです」。過去24度の五輪のうち、前年世界王者が翌年金メダルを取ったのは9例。その中でも、羽生が自分を重ねたのは、65年前、最後に五輪を連覇しているバトン氏だった。

 2人には共通点がある。1つ目は、ともにループジャンプの開拓者であること。バトン氏は52年に世界で初めて3回転ループを、羽生は昨年10月のオータムクラシックで4回転ループを史上初めて試合で成功させた。2つ目は、最初の五輪を10代で制したこと。さらに2度目の五輪前年の世界選手権で金メダルを取っていること。「いい流れが自分に来ていると、思い込んでいます」と、思わぬ重なりを信じるつもりだ。

 2度目の金メダルを取るために。来季、どんなプログラムにするかはまだ「分からない」とした。今季最終戦予定の国別対抗戦(20日開幕、東京・代々木第1体育館)後に熟考する構えだ。

 今季は「4回転時代」が進む中、フリーで4回転4本という難しい構成に挑み、世界選手権でノーミスの演技を完成させた。フリーで5本をやることも視野には入っているが「この世界選手権で、新たに考えなくてはいけない大会になった」と増やすことには慎重な姿勢だ。フリーに4回転を6度入れて、ミスが重なったチェン、一方4回転1本だけで高得点を出したブラウンら2人の米国選手の例を挙げたように、潮流はジャンプ重視から、演技を総合的な視点から評価する方向に行きつつある。羽生も「どんな隙も作らないように」と、今後連覇のためのプランをじっくり作り上げる。

 ◆ディック・バトン 1929年7月18日米ニュージャージー州生まれ。48年サンモリッツ五輪(スイス)を、フィギュアスケート男子では18歳202日の史上最年少で制して、52年オスロ五輪で2連覇を達成した。48年~52年は世界選手権で5連覇。世界で初めて48年に2回転半、52年に3回転(ループ)に成功した。また、フライング・キャメルスピンの開発者としても有名。ソチ五輪時は、解説者として、羽生の演技を絶賛した。