女子初の「5冠」を達成した池江璃花子選手(16=ルネサンス亀戸)は、昨年とはまったく雰囲気が変わりました。

 優勝して大声で泣いていたリオ五輪選考会から1年しかたっていないのに、今年は勝っても涙どころか笑顔もそれほどありません。どの種目も圧倒的に強い。この日の2種目も2位に大差をつけました。大会中のインタビューでも「自分が引っ張っていく」とはっきり言っていましたが、何か貫禄さえ漂わせていて、「本当に16歳?」と思ってしまうほどです。

 気持ちの向け方、方向性が変わったのでしょう。昨年リオ五輪を経験して世界で戦うことの大事さを感じたはずです。「日本で勝つ」とか「自分に勝つ」という目標から、「世界で勝つ」という目標への意識が間違いなく強くなっています。

 4日間で5種目、10レースを泳ぐのは本当に大変なこと。さすがに50メートル自由形の予選はペースを落としていました(予選5位通過)が、こんな余裕を持った戦い方ができるのも高校生離れしています。今大会は50メートルでノーブレス(息継ぎなし)も話題になっていましたが、これも1つのチャレンジ。今は自分の可能性を広げている時期です。世界選手権(7月、ハンガリー)でぜひ結果を出してほしいですね。(伊藤華英=北京、ロンドン五輪代表)

 ◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年1月18日、埼玉県生まれ。08年北京五輪で背泳ぎ2種目出場、12年ロンドン五輪は自由形リレー2種目出場。12年秋に現役引退。順大大学院博士後期課程修了。日大非常勤講師。173センチ。