バンクーバー五輪出場を目指すアイスホッケーの日本代表がピンチに陥った。日本リーグ13度、アジア・リーグも2度制覇した名門西武は19日、都内で会見を開き、金融危機を発端とする経済不況を理由に今季限りでの廃部を正式表明した。来年2月にはドイツでバンクーバー五輪の最終予選が行われる。最終予選の代表候補のうち11人が西武の所属で、大一番を前にした“撤退表明”は選手らに大きな影響を与えそうだ。

 西武の“撤退表明”は98年長野五輪以来の出場を目指す日本代表にとって大きな打撃だ。すでに発表されている最終予選の代表候補32人のうち、主力のFW鈴木貴人やGK菊地尚哉ら11人が西武の所属。日本アイスホッケー連盟の坂井寿如(としゆき)強化本部長は「選手への影響は否定できない」と話した。

 西武はこの日、遠征先の札幌市月寒体育館で、20日のアジア・リーグ王子戦に備えて練習した。主将で、日本代表候補のFW鈴木は廃部を伝えられた17日のことを「頭の中に言葉は入ってきていたが、受け入れるのに時間がかかった。今も受け入れられているのか微妙」と振り返り、「みんなアイスホッケーを一番に考えてやってきたので…」と声を詰まらせた。五輪最終予選に向けては「急に気持ちの切り替えは難しいが、2月までにはコンディションを整えて日本アイスホッケーの将来のために全力を尽くしたい」と言葉に力を込めた。

 坂井本部長は「『五輪出場のチャンスを生かすんだ』と考えるか、『先がないからやってもしょうがない』となるか。(廃部は)選手にとってつらいことだが、精神的に乗り越えられるかが鍵」と選手らの奮起を期待した。しかし、五輪最終予選はドイツ、スロベニア、オーストリアと格上の3カ国が相手で、苦戦が予想される。西武の廃部決定はこれに追い打ちをかけた格好だ。

 最終予選以降に目を転じても、影響は計り知れない。通年活動する企業チームのおかげで、代表選手はフィジカル面で一定の水準をキープできている。代表合宿で戦略の浸透に専念できる背景が崩れれば、国際競争力の維持は難しくなる。西武の廃部は、日本代表の強化という面でも影を落とすことになる。