<レスリング:全日本選手権>◇23日◇東京・代々木第2体育館◇女子63キロ級ほか

 女子63キロ級で五輪連覇の伊調馨(25=綜合警備保障)が、2人の世界女王を下し、昨夏の北京五輪後の国内復帰戦を2年ぶり7度目の優勝で飾った。準決勝で今年から現役復帰した世界選手権4度制覇の実績を誇る山本聖子を、決勝では世界選手権2連覇中の西牧未央を下した。今年はカナダ留学で充電期間も兼ねていたが、来年から12年ロンドン五輪に向けて本格的に走りだす。

 伊調馨は、やはり強かった。準決勝は山本と約8年ぶりの対戦。第1ピリオド(P)に投げられ先取されたが、第2、第3Pと終了3秒を切ってから鋭い動きでバックを取りポイントを奪った。決勝も世界選手権2連覇中の西牧と対戦。第2Pは延長で相手に攻撃権を奪われた状態から戦ったが、相手の片足タックルをつぶして制した。「久々に追い込まれた。でも追い込まれないとやらないタイプだから」。現状は好調時の10%という金メダリストが笑った。

 連覇を達成した北京五輪後は長期休養。姉の千春とともに今年4月からカナダに留学した。「超楽しかった。向こうのレスリングは技術重視で自分に合っていた。日本みたいに根性じゃない」。試合に出たのは10月のカルガリー・オープンだけ。解放された空気に浸り、リフレッシュした。

 長く姉妹で共闘してきたが、来年からはそれぞれの道を歩んで世界を目指す。千春は現役を続けながら地元青森に高校教諭として赴任予定。一方、馨は韓国体育大のレスリングコーチ、崔ワンホさん(32)と結婚を前提に交際している。自立を象徴するかのように、今大会前は別々の練習場で調整することもあった。所属先の大橋監督は「これまでなら一緒に練習していた」と言う。「また千春と一緒にロンドンを目指せたら」。道は違えど、伊調馨は姉と同じ夢を持って五輪3連覇に挑む。【広重竜太郎】