<フィギュアスケート・GPシリーズ第6戦:フランス杯>◇27日◇パリ

 ショートプログラム(SP)7位と出遅れた女子の浅田真央(20=中京大)は、フリーでもトリプルアクセル(3回転半)が2度とも1回転になるなど、合計148・02点で総合5位に終わり、2年連続でGPファイナル(12月10、11日、北京)出場を逃した。“本番で跳べない”症状は深刻で、本人もジャンプの修正について「無心で」と話す一方で「考えないと」とコメントが矛盾するなど混乱した。

 花の都パリでも、浅田の深い悩みは晴れなかった。両手を腰に当てて、うつむいたままリンクを去る。歓声も拍手も耳に入らない。結果を見ると目が赤らんだ。「自分の良い演技が、いつできるのかな…」。静かに、深いため息をついた。

 最初のトリプルアクセルに失敗すると、苦手な3回転ルッツは両足着氷の上に踏み切り違反。2つ目の3回転半からの連続ジャンプも、単発の1回転半になった。演技前「アーレ(頑張れ)マオ!!」「真央ちゃん、頑張れ!!」と地元フランス人や日本人から飛び交った大歓声は自然と消えた。

 「なるべくジャンプのことは考えないように意識していた。考えすぎないようにと。でも、今のジャンプをしっかり考えて跳ばないといけないし…」。矛盾した境地に、頭が混乱した。

 昨季1度も跳ばなかった苦手なルッツ、サルコーを跳ぶため、9月から佐藤信夫コーチについた。「10本跳べば10本とも違う跳び方」を、1つにするよう取り組んだ。何時間もぶっ通していた練習時間も、集中力をつけるため1時間半を1日2、3回に変更した。磨いたスケーティング技術でスピードも増した。練習でも跳べた。「方向は間違っていない」と浅田。しかし、大きな変化の中で身に付けたはずの新ジャンプは、3カ月ではまだ本当の意味で体になじんでいなかった。伊東フィギュア委員長も「彼女は練習の裏付けが必要なタイプ。時間がかかる」と話した。

 GPファイナルは2年連続で逃した。世界選手権代表選考となる年末の全日本選手権まで時間もない。伊東委員長は「あくまで目標は4年後のソチ五輪。そこに最高の状態で臨めるために、長い目で見ないといけない」とかばった。浅田も佐藤コーチも「我慢の時」と口をそろえる。「いずれはできると思う。それが早くできるようになりたい」。浅田が心から、復活の時を願った。【今村健人】