<スピードスケート:全日本スプリント選手権>◇最終日◇29日◇盛岡・岩手県営スケート場

 16歳の高木美帆(北海道・帯広南商高)が、世界一周、武者修行の“旅”に出る。この日、2日間で争われる女子総合で初出場ながら2位に入った。初日3位から500メートル6位、1000メートル優勝で、順位を上げた。来年1月から2カ月間、世界大会に転戦し続けることも決定。さらなる飛躍を期す。

 あどけない16歳の表情に笑顔が広がった。高木は最終種目の1000メートルで強風をものともせずに同走の第一人者、小平をラスト1周で逆転。どよめきの中、堂々1位でゴールした。総合は初出場で2位。レース後、小平から頭をポンポンとたたかれ祝福されると硬かった表情が一気に緩んだ。「1年ぶりの真ん中。素直にうれしい」。バンクーバー五輪代表選考会で一躍、脚光を浴びた日からちょうど1年。確かな成長の証しを示した。

 再び世界に打って出る。先に代表が決まっていた冬季アジア、世界ジュニア選手権も含め、これで世界スプリント選手権、W杯後半戦の代表も決定。来年1月15日に日本を出発し、欧州→アジア→米国→欧州と2カ月間、大会を転戦しながら世界を1周する。この間、1度も帰国しないのは代表で高木だけ。14年ソチ五輪でメダルに挑むため、日本スケート連盟から英才教育が施される。

 2カ月間、帯同する今村俊明強化部長は「世界での経験を積んでほしい。勉強道具は私が持つと約束しましたよ」と全面バックアップを約束する。高木は「楽しんで行こうと思う。大変なこともあるけど乗り切りたい」と力強い。氷上のニューヒロインには、世界で戦う覚悟がある。【松末守司】