<スキー:ジャンプ女子:世界選手権>◇25日◇オスロ◇ノーマルヒル(HS106メートル、K点95メートル)

 【オスロ(ノルウェー)25日=松末守司】女子ジャンプの14歳、高梨沙羅(北海道・上川中)は195・0点で日本勢最高の6位入賞だった。1回目92メートルの9位から、2回目は93メートルで順位を3つ上げたが表彰台には届かなかった。14年ソチ五輪での正式種目候補に挙がる同種目で、ほかの日本勢は渡瀬あゆみ(26=神戸クリニック)が7位、葛西賀子(よしこ、30=日本空調)は12位、伊藤有希(16=北海道・下川商高)は15位だった。

 濃霧が立ちこめるジャンプ台で、14歳が奮闘した。小雨もちらついた1回目は92メートル。9位からの逆襲を狙った2回目は93メートル。日本人の大会史上最年少代表だった高梨は、表彰台こそ逃したが6位。7000枚の前売りチケットが売り切れた会場で、小さなジャンパーが入賞を果たした。

 スキーの聖地で、存在感は示していた。3日間の公式練習で7本中6本で1位の飛距離を記録した。直前のコンチネンタル杯で2連勝した勢いは、日を追うごとに加速度を増し、注目度でも他を圧倒した。海外メディアからの取材も殺到。「変なジャンプはできないですね」。舞い上がっても不思議ではない“特別な場所”で緊張感さえも楽しもうとした。

 選手だった父寛也さん、先に始めた兄寛大(かんた、北海道・北照高3年)の影響で小2から競技を始めた。「空を飛んでるような感じが好き」とのめり込んだ。何げない生活の中でも突然、助走路の姿勢を取ることもある。自分の動画をチェックするのが日課で、とにかく頭の中はジャンプ一色だ。母千景さんは「やり始めたことは何が何でもやり抜く性格。休むことも勉強なんですけど…」と心配するほどだ。

 最大の武器は助走路での姿勢とスムーズな飛び出しにあるが、天性のバランス感覚と柔軟性は、モダンバレエで培った。ジャンプと並行して小3から始めた。週2回の教室に通い発表会に出るほど真剣に取り組んできた。全日本の渡瀬弥太郎コーチも「感覚がいいから踏み切りがいい。滑り方がうまいからスピードに乗る」と話す。

 女子ジャンプは14年ソチ五輪では正式種目採用の可能性がある。高梨は98年長野五輪を、小4の時にビデオで見て五輪の舞台にあこがれた。「すごい観客だった。あの舞台に立ちたい」。今回、悔しさも味わった中学2年生の夢は、3年後まで続いている。