<スキー:全日本選手権>◇30日◇富山・南砺市たいらスキー場◇男女モーグル

 モーグル界の新エース、伊藤みき(25=北野建設)が“春雪の戦い”を制した。来年のソチ五輪で使用されるコースに似たザラメ状で柔らかい雪のコースで、持ち味のきれいなターンとスピードを発揮。4年ぶり2度目の優勝を飾った。2位には村田愛里咲(22=北翔大)が入り、上村愛子(33=北野建設)は4位に終わった。男子は、山口卓也(21=白馬ク)が初優勝した。

 ゴーグルを取ると、満面の笑みだった。伊藤は決勝を1位で通過し、最終滑走で迎えたスーパーファイナル(SF)。第1エアと第2エアの間にあるコブで、スピードを保ったままのきれいなターンを披露した。エア点では村田に及ばなかったが、ターン点とタイムは1位。得点もただ1人の25点台となる25・18をマークして優勝した。「内容を重視していたので、いい滑りができたことがうれしい」と話した。

 コースは“ソチ五輪仕様”だった。「ソチの雪に似ているところで優勝できて、いい練習になりました」と振り返った。五輪と同じコースで行われた今年のW杯第7戦(2月15日)で実際に滑った。冬でも気温が10度以上の日もあるソチも、この日と同じザラメ雪だった。柔らかくて重い雪はスピードが出にくく、スキー板の操作もしづらい。対策のため、5月ごろにあえてザラメ雪の残るスキー場で代表チームの合宿を行う計画も立てられているほどだが、伊藤にとっては苦ではない。

 高校3年時に出場したトリノ五輪では20位。バンクーバー五輪は12位だった。しかし今は、日本モーグル界をけん引する存在。今年の世界選手権ではモーグル、デュアルともに2位に入り、成長した姿を見せた。「いずれエースにならないといけないかな、とは思っている。日本のモーグルチーム全体で切磋琢磨(せっさたくま)していきたい」と目標を掲げた。

 4年前、全日本選手権で初優勝したときはデュアルとの2冠を達成。今日31日に行われる、今季最終戦となるデュアルに向けても「もちろん狙っていきます」。ソチ五輪に向け、今季を満開の“みきスマイル”で終える。【保坂恭子】

 ◆伊藤(いとう)みき

 1987年(昭62)7月20日、滋賀県日野町生まれ。3歳でスキーを始め、父公英さんの指導で日野小1年からモーグル開始。日野中3年でナショナルチーム入り。近江兄弟社高から中京大に進学、北野建設所属。トリノ、バンクーバー五輪出場。今年2月のW杯猪苗代大会デュアルで初優勝。姉あづさ、妹さつきと「モーグル3姉妹」として有名。162センチ、53キロ。