<テニス:全米オープン>◇第1日◇26日◇ニューヨーク・ナショナルテニスセンター

 世界12位でアジアのエースの錦織圭(23=日清食品)がまさかの初戦敗退を喫した。それも、同179位で予選勝者のダニエル・エバンズ(23)に4-6、4-6、2-6の1時間57分でのストレート負け。1セットも奪えない完敗だった。錦織が4大大会初戦で敗退するのは11年全米で途中棄権して以来。

 熱気やほとばしるものが、最後まで沈黙した。錦織が、敗れるはずのない相手に、反撃の糸口も見つけられず。奮起の声も出ないまま、まさかのストレート敗退だ。「活気がわいてこない。1回戦負けは久しぶりなので変な感じ」。誰もが知る「つかんだら離さない」錦織の姿はなかった。

 ツアー下部2大会連続準優勝で、予選も勝ち抜いた上り調子の相手だった。失うものは何もないと、畳み掛けてきた。背は錦織より3センチ低い175センチ。しかし、時速約208キロの最速サーブは、16キロも速く8本のエースを奪われた。未知の無名の相手は「想像以上だった」。

 しかし、負ける相手ではなかった。第1セット第3ゲームで、早々と相手のサービスゲームを破り、主導権を握った。第8ゲームも自分のサーブで40-15。5-3が目前ながら、軽はずみに逆転を許した。第2セットも最初のゲームをブレーク。それでも突き放せなかった。

 得意のはずだった8月の北米ハードコートでの戦いは、完全に不発だった。4大会で3勝4敗と負け越した。「モチベーションがわいてこない」。7月のウィンブルドンまで3カ月の欧州遠征で「やり切った感があった」。初めて味わう燃え尽きにも似た感覚だ。

 今後は、9月13日からの国別対抗戦デ杯と、同月30日開幕で昨年優勝の楽天オープン出場のため帰国する。「テニスは悪くないので、もう少し勝ちが続けば自信が戻る」。母国での2大会を、世界の「エア・ケイ」復活の舞台に変える。【吉松忠弘】