<フィギュアスケート:全日本選手権>◇第2日◇27日◇長野市ビッグハット

 「平昌五輪の星」が初舞台で躍動した。11月の全日本ジュニア覇者で出場選手最年少の樋口新葉(13=日本橋女学館中)が64・35点で3位につけた。スピード豊かな滑りに、高難度ジャンプを持ち合わせる次代のエース候補。初出場で好位置につけ、戦後では72年の渡部絵美以来、42年ぶりの13歳での戴冠が見えてきた。

 149センチの小柄な体が、ひときわ大きく見えた。息つかせぬ弾丸のように滑り抜けた演技を終えると、両手を天に掲げて万歳。「今日はちょっと笑顔が足りなかったかな」と緊張はあったが、この時ばかりは解放感たっぷりに無邪気にほおを緩ませた。「うれしかったです!」「90点!」「自分に勝てたかな!」。持ち味をいかんなく発揮した。

 スピード感は抜群。岡島コーチは「身のこなしが天性のもの。速さには重心移動が肝になるので」と舌を巻く。この日も冒頭のダブルアクセル(2回転半ジャンプ)を勢いよく決め、金妍児が得意とした3回転ルッツ-3回転トーループの高難度技へ。わずかに後半が回転不足も、「点は取れるのは分かっていた」と高得点に驚きもなかった。

 1年前の全日本選手権では花束を集めていた。演技後の選手に投げ入れられた花を拾うフラワーガール。「(浅田)真央ちゃんの時のお花がすごかった」と振り返る。たった1年で、花束をもらう立場になった。

 驚異的な飛躍は自立心に支えられた。母実枝子さん(50)は「あの子は自立ではなく、自由なんです」と苦笑するが、幼少期から試合のメークも自分、海外遠征では部屋が違うと1日以上母に連絡をしないこともあるという。

 11月の全日本ジュニアで浅田、安藤と同じ中2で優勝後、注目度は急上昇中。首位とは2・35点差で、10位以内が目標だった13歳に、浅田、安藤も超える年少記録が見えてきた。昨年末から続くシンデレラストーリー。「明日も自分の滑りを」と無欲の超新星が、最高の形で1つの物語を終える。【阿部健吾】

 ◆中2での全日本選手権出場

 浅田真央は04年大会でSP4位(60.46点)、フリー2位(106.36点)で2位。当時とは採点の計算方法が異なり単純比較はできないが、SP順位では樋口が上回った。採点方式自体が違う01年大会では、安藤美姫がSP、フリー、合計とも3位だった。<樋口新葉(ひぐち・わかば)アラカルト>

 ◆生まれ

 2001年(平13)1月2日、東京都生まれ。名前の由来は新世紀の始まりで、新宿区在住から「新」の1文字を採用。家族は両親、姉、兄。

 ◆サイズ

 身長149センチ。小学校6年の終わりから1年間で約10センチ伸びた。

 ◆競技歴

 3歳で競技を始める。4歳から明治神宮外苑スケート場で岡島功治コーチに師事。13年全日本ノービス優勝。

 ◆ジェット娘

 滑りの速さを日本連盟の小林強化部長は「靴にジェット噴射が付いているみたい」。

 ◆あこがれ

 浅田真央、安藤美姫、金妍児。