<2009年4月5日付日刊スポーツ紙面から><柔道:全日本選抜体重別選手権>◇4日◇福岡国際センター

 女子63キロ級で上野3姉妹の二女、上野順恵(25=三井住友海上)が、2年連続5度目の優勝を果たした。決勝の相手は五輪女王の谷本歩実(コマツ)。5分間では決着せず、もつれ込んだ延長開始早々の18秒に大外刈りで技ありを奪い、ライバルを下した。今年に入り、2月のフランス国際、ドイツ国際、そして今大会と3連勝。世界選手権(8月、オランダ)の初代表入りを確実にした。

 気迫がライバルを上回った。五輪連覇を達成した谷本との決勝戦。ゴールデンスコア方式の延長に入った開始18秒、上野順は一瞬のスキを見逃さなかった。今大会のために磨きをかけてきた、大外刈りを繰り出すとライバルの背中が畳についた。「絶対倒さなければいけない相手。投げたときはだめかなと思ったが、気持ちでいった」と満面の笑みを浮かべた。

 昨年は優勝しながら、北京五輪代表を逃した。泥臭い柔道に対し、谷本は1本を取れる華やかな柔道。自分に迷いが生じたが、今年の正月、旭川南高柔道部元監督の中野政美氏から「谷本とお前は違う。自分の柔道をすればいい」と言われ、自らを貫き通すことを決意した。「気持ちで負けないように前に出た」と、吹っ切れた先に勝利が待っていた。

 初の世界選手権代表をほぼ手中に収めた。実績では谷本有利は動かないが、3月の全日本合宿で右ひざを脱臼するなど満身創痍(そうい)。一方、上野順は選考対象となる2月のフランス国際、ドイツ国際を連勝。全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長は「上野順を世界でみたい気持ちはある」と代表入りを示唆した。

 3月に姉雅恵が引退し責任感も出てきた。「お姉ちゃんと五輪に行けなかったけど、今度は妹(巴恵)を私が引っ張っていく。2人で五輪にいきたい」。直接対決では谷本を上回っている。12年ロンドン五輪に向け、足りないのは実績だけ。初めて挑む世界選手権は、上野順にとって谷本との立場を逆転させる絶好の機会になる。

 ◆上野順恵(うえの・よしえ)

 1983年(昭58)7月1日、旭川市生まれ。旭川南高から三井住友海上へ。旭川南高時代に高校総体2連覇。04年福岡国際で優勝。04、05年に講道館杯を連覇した。全日本選抜体重別選手権は、2年連続5度制覇している。父法美さんは道場を経営。姉雅恵、妹巴恵との柔道一家として知られる。164センチ、63キロ。