<大相撲九州場所>◇12日目◇20日◇福岡国際センター

 横綱鶴竜(29=井筒)が、まさかの変化で大関豪栄道(28=境川)を下して1敗を守った。立ち合いで右に変わり、すかさずはたき込み。期待された好取組は、わずか0秒9で終わった。

 横綱らしからぬ相撲に、満員の場内は騒然とした。ため息とどよめきが起こり、ヤジも延々と飛び交った。

 勝ち残りの控えに座り、怒号を一身に浴びた鶴竜は「勝ちたい気持ちが強すぎた。そういう気持ちに勝てなかった」と、まるで敗者の弁のようにつぶやいた。

 ただ、これで優勝争いは大きくしぼられた。2敗で平幕栃ノ心(27=春日野)が追うも、横綱白鵬(29=宮城野)とのマッチレースの様相を呈してきた。「(優勝は)こういう相撲だと難しい。しっかり切り替えて、自分の相撲を取れるようにしたい。余計なことを考えずに」。邪念を振り払うように、何度も繰り返していた。