<大相撲九州場所>◇12日目◇26日◇福岡国際センター

 よもやの変化に、横綱朝青龍(29)がバッタリと手を着いた。立ち合いから左でまわしを取りに行った瞬間、相手の体が左へと動いて突き落としを食らった。場内が騒然とする中、引き揚げていく花道でも顔をしかめ、首をかしげた。支度部屋に戻るなり「ア~ッ!」と絶叫し、怒りを爆発させた。

 初黒星の相手が日馬富士だったことも、悔しさを倍増させる一因だった。モンゴルの後輩で、普段から飲みやゴルフを共にするなど弟分的な存在。今場所6敗と苦戦するのを見て、前日11日の白鵬戦前には「右前みつを取りに行け」と助言までしていた。そんな相手に足もとをすくわれた自分に、納得できなかった。

 「悔しいな。立ち合い、ちょっとミスった」と振り返りつつ「ゴホ、ゴホッ」と苦しそうにせき込む。前日から「のどがね」とかぜの症状を訴えていた。取組前には支度部屋で必ずうがいをするが、この日は普段にも増して入念に行っていた。症状について聞かれると「ちょっと息苦しい」。それでも「それで、ああでもこうでもないけどね」とかぜの影響を否定した。

 ライバル白鵬が全勝を守ったことで、25回目の賜杯にも暗雲が立ちこめる。自力優勝するためには、もう負けは許されない。