<大相撲九州場所>◇10日目◇23日◇福岡国際センター

 西前頭9枚目の豊ノ島(27=時津風)が、記録的優勝に1歩近づいた。同6枚目の徳瀬川(27)を下手投げで破り、1横綱2大関とともに1敗を守った。日本人として4年10カ月ぶり、平幕として9年2カ月ぶりの優勝へ向け、条件が整ってきた。今後は、上位との対戦がカギになる。

 本場所中は興奮して、午前3~4時くらいまで眠れない。それでも豊ノ島は、目が覚める相撲で徳瀬川を転がした。「これからもっと、高ぶってくる。舞い上がらず、気持ちを抑えて相撲を取りたいです」。優勝を視野に入れつつ、努めて冷静に言葉を発した。

 平成以降、7度の平幕Vには共通のデータがある。(1)10日目まで2敗以内(2)横綱、大関に休場者がいて上位が手薄(3)3役以上との対戦で勝ち越し、が最低条件になる。豊ノ島は(1)と(2)が当てはまり、今後は(3)が課題になる。12日目以降に可能性がある上位との対戦が、優勝の行方を左右する。

 唯一、2度の平幕Vを経験した秀ノ山親方(元関脇琴錦)は「優勝するなら、横綱、大関を倒さないといけない。でも、まだ意識するのは早い。自分は脇役だという意識でやっていけば、上位がこけて、いつのまにかトップに立てる」と経験をもとに指摘する。

 番付に関係なく、日本人力士への期待も高い。外国勢以外の優勝は、06年初場所の栃東(玉ノ井親方)が最後。豊ノ島は「僕らも『(優勝は)外国人ばっかり』と一番言われている。ちょっとでも、大和魂を見せられるよう頑張らないと」と話す。

 場所前、番付表を見た父梶原一臣さん(58)からは相当数の勝ち星を予言され、最近は「オレの想像通りだな」と言われたという。今場所は、想像しにくかった白鵬の連勝が止まり、10日目で4人が並走する。残り5日、父の想像を超える結果を狙っている。【佐々木一郎】