<大相撲夏場所>◇5日目◇10日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(27=宮城野)が小結豊真将(31)を下し、2日目から4連勝で1敗をキープした。通算勝利数を670勝として元横綱朝青龍(ドルゴルスレン・ダグワドルジ氏)の669勝を抜いた。

 初日が出ていない豊真将を、白鵬が冷静に押し出した。立ち合いで左を張ると、その手で瞬時にまわしをつかんだ。相手も懸命に前まわしを取りに来るが、振り回して土俵際へ運ぶ。見せ場すら作らせずに最後の一押しで勝負を決めた。白鵬は「元気がない相手だったが、この一番にかけてくるだろうし、見ていこうと思った」と淡々と振り返った。抜かりない取り口で4勝目だ。

 通算670勝で元横綱朝青龍の通算勝ち星を抜いた。最初は「そうですか」と目をつぶりながら言った白鵬も「いくつ?」と目を見開いた。朝青龍は10年2月に引退勧告を受け入れた。当時、知らせを受け会見を開いた白鵬は、多くの報道陣を前にして号泣。母国モンゴルからの横綱として尊敬できる先輩でもあった。その会見で「横綱(朝青龍)の分まで」と宣言したように、引退以来、13場所にわたって1人横綱として角界を引っ張っている。「この2年間が充実していたということでしょう」。不祥事や震災など、さまざまな出来事の中で相撲界を背負ったプライドがある。

 白鵬は宮城野部屋がある地元への貢献も忘れない。12日に行われる、墨田区聴覚障害者協会の60周年記念大会へプレゼントを贈った。場所中で出席はできないため、写真集と手形の色紙を2部ずつ関係者を通じて渡した。同協会の荘司康男会長も「昨年は震災の影響で開催できなかった。今年は白鵬関にこうして協力いただいて本当にありがたい」と深々と頭を下げた。

 序盤5日目までを終えて4勝1敗。早くも追い掛ける展開だが「最近の大関3人(琴奨菊、稀勢の里、鶴竜)に勢いがあると場所前に言った通り。期待通りというか、ね」と余裕の表情だ。2場所連続の逆転優勝へ向け、1敗の2番手グループから、トップをぴたりと追走する。【高橋悟史】