<大相撲九州場所>◇千秋楽◇25日◇福岡・福岡国際センター

 関脇豪栄道(26=境川)が、来年の大関昇進へ足掛かりとなる11勝目を挙げた。大関琴奨菊(28=佐渡ケ嶽)を突き落としで破り、今場所は5大関すべてに勝利。昨年5月の技能審査場所以来3度目の技能賞も獲得し「上に上がりたい」と大関とりへの意欲を口にした。既に優勝を決めていた白鵬(27)は日馬富士(28)との横綱対決を制し、14勝1敗で終えた。

 堂々の大関とり宣言だった。「もっと強くなって、上に上がりたい」。関脇で11勝目に到達した豪栄道は、はっきり言い切った。

 強い向上心は、千秋楽の相撲に表れていた。大関琴奨菊を、右からの強烈な突き落としで、あっさりと土俵上に転がした。3度目の技能賞も獲得し、不戦勝だった把瑠都戦を含めて5大関すべてを撃破。「これからも勝っていかないと、上に上がっていけない。これからも勝ちたい」。自分に言い聞かせるように、口元を引き締めた。

 取組前は、周囲をヒヤリとさせた。西の三役そろい踏みで、土俵に上がってから立つ位置を間違えた。恥ずかしい所作ミスにも「いつもと違うから。アホなんでしょうがない」と気にしなかった。

 勝ち名乗りを受け、行司の式守伊之助から矢を渡されると慎重につかみ取った。境川部屋ができて10年目で、初めて獲得した栄誉の矢。朝稽古で境川親方(元小結両国)から「うちはまだ矢をもらったことないんだから取ってこい」とゲキを飛ばされていた。親方の望みを見事にかなえ、2本の矢は東京の同部屋の神棚に飾るつもりだ。

 妥協しない強い性格は、頼もしくもある。今年は左肘を手術し、左肋軟骨骨折にも見舞われたが、故障について多くを語らなかった。「口に出すと気持ちが弱くなる。甘えが出る。痛いと言っても、言い訳にならない」。今場所も8連勝で迎えた9日目の日馬富士戦で誤審騒動にあい、やり直しの一番で敗れたが「負けは負け」と無駄口をたたかなかった。

 北の湖理事長(元横綱)は「これを足掛かりにしていけば、大関って声も掛かってくる。自信を持って(相撲を)取ればいい」と言った。

 昇進ラインは直近3場所で33勝。秋場所は8勝の豪栄道だが、数字上は来年初場所で14勝すれば到達できる。「周りに惑わされず、しっかり稽古したい」。浮かれず精進を続けていく覚悟だ。【木村有三】