<大相撲夏場所>◇14日目◇25日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(28=宮城野)が、大関稀勢の里(26)をすくい投げで下した。14戦全勝で2場所連続優勝に王手をかけ、今日26日の千秋楽は横綱日馬富士戦。勝てば歴代1位を更新する10回目の全勝となり、歴代3位の朝青龍に並ぶ25回目の優勝が決まる。

 白鵬が、稀勢の里を体ごと土俵に押しつぶした。相手十分の左四つ。それでも自分から攻めた。下半身を踏ん張りながら、ジワジワとまわしを引きつける。最後は左からのすくい投げ。相手を大の字にひっくり返し、鬼の形相で勝利を誇った。

 右腕にびっしりと付いた砂を洗い流すと、支度部屋では冷静に全勝対決を分析した。「稀勢の里十分の体勢だったね。まだまだ一枚も二枚も上だなという気がする」。それほど、28歳を迎えた心身の充実を感じている。

 自身の背中を追う存在には「全勝同士は初めてですから、力が入りましたね。やりがいがあったね」と喜んだ。朝稽古では「大相撲を盛り上げてくれるし、自分自身も一段と強くなっていけると思う」と言った。

 差は下半身にあった。勝負の瞬間、稀勢の里の左足がわずかに滑った。同時に白鵬の右足もわずかに流れた。崩れるか、耐えられるか-。その違いが白鵬の自信。「硬いはずの土俵が軟らかかった。足の裏の感覚。軟らかい分、相手のほうが滑ったのかな。結果的にはそこが勝ちにつながった気がします」。

 白鵬が歩くと「わだち」ができる。土俵の砂に両足親指の裏が描く1本の線。「寝ている時以外は意識しているよ」。土俵上だけでなく、雪駄(せった)を履いても同様。親指が地面を離れることがない。「ひとつずれれば負ける世界。足の裏に何かがくっついている感じ。土俵は宇宙。宇宙と一体感を意識している」。奥の深い積み重ねの勝負の世界。「1日2日で誰かがまねすることはできませんよ」と話したこともあった。

 今日26日の千秋楽結びの一番で、日馬富士と対戦する。負けるつもりはみじんもない。2場所連続優勝は、モンゴルの先輩横綱に並ぶ25回目。全勝優勝も2場所連続10回目。区切りの歴代100回目も刻む。自身4度目の30連勝にもなる。横綱を目指す稀勢の里を圧倒した一番。これからも白鵬の残す「わだち」は、まだまだ長く続く。【鎌田直秀】