<大相撲夏場所>◇千秋楽◇25日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(29=宮城野)が、2場所ぶり29度目の優勝を決めた。横綱日馬富士(30)を上手投げで倒して14勝1敗。直前の取組で大関稀勢の里(27)が横綱鶴竜(28)を破って2敗を守り、負ければ決定戦にもつれこむ大一番だったが、モンゴルから来日中の両親の前で強さを見せつけた。全盛期からの衰えも指摘されるが、相撲への情熱と抜群の反応力は健在。優勝30回の大台へ、王手をかけた。

 大一番でも、白鵬は余裕があった。「負けてもいいと。(決定戦と)2番取るつもりでやりました」。直前に稀勢の里が2敗を守っても、やるべきことに集中した。張って左に動いて上手をつかみ、右も差す。万全の体勢から、上手投げで日馬富士を転がした。負ければ決定戦という思いを抱いた満員の観客に強さを誇示した。モンゴルから来日中の両親にも勇姿を見せ「29歳で29回目の優勝。うれしいです」と目を細めた。

 今場所、得意の右四つ左上手での攻めが減っていた。31回優勝を誇る九重親方(元横綱千代の富士)は「ピリッとしなかった」と指摘していた。だが、抜群の集中力とピンチを瞬間でかわす反応は健在。「型にこだわらないのが目指す相撲。どんな動きにも対応できた」と胸を張った。

 師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)は「体力は少し落ちている」と言う。白鵬も「これからは、心技体を維持していくだけ」と、成長曲線を描けないことを自覚する。一方で「学ぶことはね、死ぬまでたくさんある」と、相撲道を究める意欲に衰えはない。最近、週に1度はジムに通う。「(おもりを)手前に引く時、まわしを引きつけるイメージでやる」。常に土俵での戦いを思い描いている。

 V30を狙う名古屋場所前には、滋賀・長浜市で合宿を初めて実施する予定だ。同地は、戦国時代に豊臣秀吉が後の天下統一へ地盤を固めた場所。大台到達、さらに最多32回優勝の大鵬超えへ。「そういう気持ちは心のどこかにしまって、言葉で言わずに頑張っていきたい」と白鵬。不言実行で、角界の頂への歩みを進める。【木村有三】<幕内優勝回数>(1)大鵬

 32回(2)千代の富士

 31回(3)白鵬

 29回(4)朝青龍

 25回(5)北の湖

 24回(6)貴乃花

 22回(7)輪島

 14回(8)双葉山

 12回(8)武蔵丸

 12回(10)曙

 11回