ただでさえ負けられない巨人にとって、今試合の逆転負けは致命傷の1敗になった。アドバンテージを含めて3敗だから、痛いのは当たり前。しかし、数字以上の敗北感を感じてしまった。なによりも残念なのは、ベンチの意図する「攻め」の意味を、巨人バッテリーはまるで理解していなかったことだ。

息詰まる投手戦の中、巨人は6回まで1安打1四球6三振に抑えていた田口から、畠をリリーフに送った。いろいろな意見があるだろうが、私はこの継投は勇気ある決断だと評価したい。批判を恐れない“攻めの継投”だと思ったからだ。

ところがベンチの攻撃的な姿勢は、畠と小林のバッテリーに伝わっていなかった。8回2死から代打松山に対し、6球のすべてが変化球で四球。確かに2死から長打のある打者を迎えれば、四球より1発を警戒しなければいけない。しかも松山は直球にめっぽう強い。しかし、だ。畠の一番の武器はなんなのか? 力のある直球ではなかったのか。直球で続けて攻めろとは言わないが、6球のすべてが変化球。自らの武器を捨て、萎縮してしまったような投球になった。

リリーフした先頭打者の丸からは、直球で空振り三振を奪った。それなのに松山から菊池に3ランを浴びるまでの打者4人には23球中直球は4球だけ。結果は四球、二塁打、四球、本塁打。直球が武器の本格派が、これでは話にならない。投手なら「打てるものなら打ってみろ」という気持ちが大切。捕手なら相手に合わすよりも、まずは自軍の投手の持ち味を最大限に生かせるように考えなければいけない。そういった大前提にあって「かわす」という戦術が有効に使えるようになる。先発の田口は技巧派左腕だが、内角を強気に突いて好投した。威力のある直球を投げる畠が、なぜ変化球ばかりに頼ったのか? もう1度考えて欲しい。(日刊スポーツ評論家)