上茶谷(中央)を囲んで記念撮影をする権藤氏(左)と三浦コーチ(撮影・狩俣裕三)
上茶谷(中央)を囲んで記念撮影をする権藤氏(左)と三浦コーチ(撮影・狩俣裕三)

「パワーフェード」に注意!日刊スポーツ評論家陣が阪神のライバル球団を敵情視察する「潜入」企画。最終回は98年横浜(現DeNA)日本一監督の権藤博氏(80)が古巣の1軍宜野湾キャンプを鋭く分析した。

かつての教え子でもある新任の三浦投手コーチからも情報収集し、ドラフト1位の上茶谷大河投手(22=東洋大)を高評価。3つのポイントから難敵になる可能性を指摘した。【取材・構成=佐井陽介】

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実力を図るには、ほんの数十分だけで十分だった。権藤氏はぬかるんだ泥土を踏みしめ、目的のブルペンへ。三浦投手コーチの横で上茶谷の23球をチェックした後、「おもしろい!」とうなずいた。

名伯楽を納得させたポイントは3つあった。

<1>リリースポイント

「不器用なのは投手にとって大事なことなんだよ。小器用な投手は手先で細工したりモーションを変えてみたり、いろいろやろうとしてポイントにズレが出る。逆に不器用な投手はそれができないからリリースポイントが一定になる」

投球の回転数などを数値化できるトラックマンによれば、すでに上茶谷のリリースポイントはチームトップクラスのブレのなさだという。一定のリリースポイントが制球の安定を生む。

<2>独特の間

「打者からすれば、モーションとボールがちょっと合わないだろうな。肘に“ため”があって手が遅れて出てくる。そうなると打者はちょっと間を外される」

肘を押し出してからボールを離すまでの間に長さがあり、特に一見の打者はタイミングを外される可能性がありそうだ。

<3>「パワーフェード」

「力のあるボールがナチュラルでシュート回転する。よくシュート回転はダメな投手の代名詞とされるけど、力のあるボールが右打者の真ん中から内側に来たら打ちづらいよ。抜けて沈むシュート回転は速さを感じないけど、しっかり指にかかったシュート回転は武器になる」

権藤氏が「あのシュート回転はいい」と褒めると、三浦コーチは右に曲がる球筋のゴルフ用語「フェード」に例えて「パワーフェードです」と笑ったという。

上茶谷は20日の練習試合・ロッテ戦で最速152キロを計測し、2回を完全投球した。DeNA先発陣は昨季新人王の東が左肘痛を発症し、開幕ローテ入りが微妙な情勢。それでもドラ1右腕が「三種の神器」を武器に開幕からフル稼働するとなれば、やはり侮れないライバルになる。(日刊スポーツ評論家)

ウオーミングアップ後、キャッチボールをする上茶谷(撮影・狩俣裕三)
ウオーミングアップ後、キャッチボールをする上茶谷(撮影・狩俣裕三)