日刊スポーツ評論家の上原浩治氏(45)が、プロ初先発の楽天早川隆久投手(22)をチェック。冷静なマウンドさばきで初勝利を挙げた左腕を、20勝4敗、防御率2・09で沢村賞を獲得した自身の1年目初登板時と比較し「俺より上」と絶賛した。

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今季のNO・1ルーキー投手の呼び声が高い楽天早川が、開幕3戦目で先発デビューした。あまり関係ないが、私のプロ入りデビューも開幕3戦目で、結果は6回3分の2を投げ4失点で負け投手。一方の早川は雨が降る中、6回無失点で白星を飾った。結果だけではなく、内容を比べても「俺より上」だった。

いきなりビックリした。初回、先頭打者の西川を追い込むと、捕手のサインに首を振ってストレートで空振り三振を奪った。捕手から「首を振ってから投げろ」というサインが出たのかもしれないが、カウントは1-2で余裕もある。自分が投げたいボールがあっても、ボールゾーンに投げればいいだけ。それでいて首を振るのだから、自分のピッチングスタイルみたいなものが確立しているのだろう。

4点をリードした6回1死二塁からも、足を滑らせて四球を与えた。そこで、マウンドに来た投手コーチに、右足を踏み込む部分の整備を頼んだように見えた。もちろん投手コーチが整備を促した可能性はあるが、なかなかルーキー投手が要求できるようなものではない。いきなり首を振れるのも、試合中に整備を要求できるのも、自分を見失っていない証拠だろう。

メンタルの強さに加え、ピッチングも完成度が高かった。真っすぐ、スライダー、チェンジアップのどの球種でもストライクが取れるし、勝負球で使えるキレもある。さらに左打者の西川、近藤に対し、それぞれ1球ずつチェンジアップを投げていた。並の左投手というのは、左打者に対して抜くように投げるチェンジアップやシンカー系の変化球が投げられないタイプが多い。まだ余裕があるカウントでしか投げていないが、デビュー戦で同点の状況で投げられるのだから「すごい」のひと言だ。

思わず、自分自身のデビュー戦を思い出した。プロ入り前は、全日本の試合で金属バットの使用が認められていた。アマ野球最強チームと呼ばれたキューバのキンデラン、パチェコ、リナレスのような、メジャーでも通用する打者が金属を使っていた。「いくらプロの打者でも、やつらより上ということはない」と思っていたし、それほど緊張はしなかった。だから周りの状況も見えていた。しかし、早川ほど冷静でなかったし、変化球の制球力も正確ではなかった。

完成度という点では、これまで見たこともないようなレベルのルーキー。あとは走者を出してから少し制球が乱れる点の改善と、スタミナをアップさせるだけ。微妙な改善点も、投げていけば問題なくクリアできるだろう。打線とのかみ合わせがよく、大きなケガさえしなければ、2ケタ勝利以上は確実。圧巻のデビュー戦だった。(日刊スポーツ評論家)

◆上原浩治氏の1年目 大体大から逆指名で巨人に入団し、1年目の99年は20勝4敗、防御率2・09をマーク。5月から9月までに15連勝を記録し、毎週日曜日に先発することから「サンデー上原」と称された。最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率、新人王、沢村賞などを獲得。

楽天対日本ハム 力投する楽天先発の早川(撮影・山崎安昭)
楽天対日本ハム 力投する楽天先発の早川(撮影・山崎安昭)