壮行試合の初戦こそ不安の残る内容だったが、2戦目は一転した。何よりも収穫だったのは、先発した田中将の投球内容だろう。これなら大事な試合の先発を任せられると感じさせた。

シーズン中の投球内容は、ダメというわけではないが「だいぶ衰えたのかなぁ」と思えてしまった。しかし、今試合は球速こそ140キロ台後半だが、低めとコーナーへの制球力が抜群によかった。国際大会は外角のストライクゾーンが広く、低めへの制球力は長打を防ぐための1番の武器になる。3回1死、2ストライクから湯浅に対して空振り三振を奪ったチェンジアップが高めに浮いたぐらい。安心して見られる内容だった。

思えば開幕直前にコンディションを崩し、シーズン中は立て直す余裕がなかったのかもしれない。そんな中、オールスターも欠場。心配ではあったが、ひと息ついたことにより、リフレッシュできたのだろう。3番手で登板した大野雄の状態もよさそうで、これなら前日に投げた山本と森下とともに先発の一角を任せられる。

攻撃陣もまずまずの状態だが、不安が残るのが4番を務めた鈴木誠だろう。第1打席で左翼線二塁打は打ったが、第4打席は内角の直球に差し込まれるような形で見逃し三振。第5打席には外角の真っすぐを見逃し三振した。国際大会は外角のストライクゾーンが広く、壮行試合では球審に外角のゾーンを広く取ってもらうように頼むのだが、自分の打撃で精いっぱい。国際大会への対応策どころではなかったように見えた。

五輪は最短で5試合で、最長でも8試合。鈴木誠の守備力を考えればスタメンから外すわけにはいかないが、短期決戦では4番にこだわる必要はない。5番を打っている浅村の状態はよさそうで、実績的にも能力的にも十分に4番を打てる実力がある。鈴木誠は6番あたりに打順を下げ、楽に打たせることにより、復調を待つことも考えた方がいい。

守備陣のバリエーションは少ないメンバー構成になってしまったが、打順は固定観念にとらわれず、臨機応変に対応すればいい。巨人の繰り出した投手陣がやや格下の投手で、これで大丈夫とまでは言えないが、能力のある打者がそろっている。地元開催でもあり、「悲願の金メダル」を獲得する絶好のチャンス。野球が五輪競技に採用されるのも、これが最後の可能性もある。このチャンスを逃さないでほしい。(日刊スポーツ評論家)

巨人対日本代表 9回表日本代表2死、三振に倒れ肩を落とす鈴木誠(撮影・垰建太)
巨人対日本代表 9回表日本代表2死、三振に倒れ肩を落とす鈴木誠(撮影・垰建太)