巨人と中日は期待の新戦力が、今後への学びを得た試合となった。

巨人先発の山崎伊は鋭いスライダーとシュートを駆使して、両コーナーを突いた。持ち味を十分に出したと言える。だが5回2死一塁で投手の勝野に痛恨の逆転2ランを浴びた。「投手に1発はない」と心のどこかで思っていただろう。私も同じ過ちを犯したことがあるから、分かる。

巨人対中日 5回表中日2死一塁、勝野に逆転2点本塁打を浴びる山崎伊(撮影・河田真司)
巨人対中日 5回表中日2死一塁、勝野に逆転2点本塁打を浴びる山崎伊(撮影・河田真司)

横浜(現DeNA)時代の96年。8月の巨人戦で石毛博史に1発を食らい、ベンチへ戻った。恐る恐る大矢監督の方を見ると、鬼の形相をしていた。ベンチ裏へ呼ばれ、こっぴどく怒られた。論理的に諭される大矢監督に激怒されたのは、あの1度だけ。5月に中日の佐藤秀樹にも打たれていた。それでも油断が消えていなかった。2度、同じ失敗を繰り返してはならない。今も記憶に残る怒声とともに学んだ。

山崎伊はプロ初先発で勝利投手の権利まで、あと1死だった。そういう舞台で体験したことをプラスに捉えてほしい。逆転弾を許した後も6回まで続投し、追加点は許さなかった。延長12回制が復活した今季は、チームにとっても大きな1イニングだった。山崎伊にとっても、あのまま崩れることなく、投げ抜いた6回は今後の投球に生きるはずだ。

巨人対中日 8回表中日2死満塁、押し出し四球となりガッツポーズで喜ぶ中日石川昂(左)。右は大城(撮影・狩俣裕三)
巨人対中日 8回表中日2死満塁、押し出し四球となりガッツポーズで喜ぶ中日石川昂(左)。右は大城(撮影・狩俣裕三)

中日石川昂は2回1死二、三塁で初球の外角スライダーに二ゴロを放ち、先制点を入れた。開幕戦でも2点を追う6回に同じ1死二、三塁の場面があった。通常の守備陣形で転がせば反撃の1点が入る。だが内角を意識して少し腰が開き気味になったところを外角スライダー攻めにあい、三振した。1点が入れば試合の流れは分からなかった。

一夜明けた、2戦目で内野ゴロで先制点を入れた。大きく手をたたき、ベンチに戻っても笑顔だった。ホッとした気持ちは理解できる。だが初球から、スイングが緩み、内野ゴロを狙った打撃だった。まずはヒットを狙い、追い込まれてから切り替えたのならいい。長打力のないタイプなら、そういう打撃にもなるだろう。しかし今は7番を打っているが、将来の4番を期待されている。高みを目指すなら、同じ得点機でも打席内でのアプローチが変わってくる。

課題が早くも出た。だが開幕2戦目で明確になったことは悪いことではない。両チームの大きなプラス戦力となりえる若手なだけに、今後への教訓となれば貴重な経験といえる。(日刊スポーツ評論家)