3回表、21歳の小幡選手の何げない動きに、二遊間の選手としての将来性を感じました。藤浪投手が先頭打者に四球を出した直後、すかさずタイムをかけて声をかけに行った場面です。投手に「間」を取らせる意味でも、タイミングの良さが光りました。結局、藤浪投手はこのイニングをゼロに抑えています。

小幡選手はまだオープン戦期間だった3月5日楽天戦の初回にも、制球に苦しんでいた藤浪投手のもとに2度も走っています。自分もそうでしたが、若い頃は先輩の投手に対して「声をかけに行っていいものか」と毎回悩んだもの。6歳上の藤浪投手にも堂々と振る舞える小幡選手には、レギュラーを張れるだけの素質があると考えます。

だからこそ、これからは打席での状況判断をさらに磨いてほしいものです。2回裏2死では8番打者としてしぶとく左前に運び、9番の藤浪投手まで回してからイニングを終えさせました。この打席では役割を果たしましたが、その後の内容には課題も残りました。

たとえば2点差に迫って迎えた4回2死一塁、三ゴロに倒れた場面。この回、大瀬良投手は5番大山選手にソロを浴びた直後、6番糸原選手に四球を与えています。明らかに左打者に投げづらそうだったにも関わらず、同じ左打者の小幡選手は初球、外角高めの難しい変化球にあっさり手を出して相手を助けています。

もちろん積極的な姿勢は大事。ただ、流れや場面によっては時にボールを絞る、見極める状況判断も必要です。同点の9回に先頭で空振り三振に倒れた場面も、三振アウトだけは避けなければならないケース。同じ凡退でも失策の可能性があるゴロアウトや、投手の動揺を誘う大きな外野フライであれば、またアウトの価値は違ったと思います。

この日は6回と11回にも好機で三振。悔しさが残る試合になったはずです。とはいえ、強肩で足が速く打撃も成長中。期待値の高い選手であることに疑いの余地はありません。長くレギュラーを張れる存在に成長するためにも、今後は打席での状況判断をさらに大切にしてほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)