阪神が接戦を落とし、広島に開幕から1分けを挟んで7連敗を喫した。初回に4番佐藤輝明内野手(23)の同点打などで逆転に成功したが、2回以降は拙攻で無得点に終わった。日刊スポーツ評論家の真弓明信氏(68)は、守備位置の定まらない現状から佐藤輝を4番サードで固定し、チームの土台を築くことを提言した。【聞き手=田口真一郎】

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1点差の敗戦ではあるが、打線の状態は重症だ。まず阪神の先発布陣を見た時に、首をかしげた。この顔ぶれなら、佐藤輝が右翼に入り、大山が三塁、糸井が左翼でいいのではないか。マルテを一塁で起用したいのは分かるが、わざわざ大山を慣れない左翼で使うというのは、守備力を考えた上で解せない。守備位置よりも打撃優先の選手起用が続くが、それは各打者に「打たないと使ってもらえない」と心理面でよりプレッシャーを与えるものだ。大山をはじめ、代打ロハスや梅野ら力みが見られる選手が多い。

佐藤輝が右翼よりも三塁で先発した時のほうが打率がいいというデータがある。これは相手先発が右投手の時に三塁に就くケースが多いということもあるかもしれないが、そういう数字を残しているなら、4番三塁で固定すればいい。もともと私は、内野を守れるなら入団時から内野のポジションに就かせて鍛えるべきという考えだった。プロの世界で、外野を守ってから、内野にコンバートするのは難しい。今のような内外野の併用では守備に対する意識が希薄になる。

佐藤輝が打線の中心であることは明白。まずは三塁に固定して、チームの土台をしっかりと築くべきだ。そして一塁は大山でいい。足のコンディションに不安を抱えるマルテを無理させる必要はないし、マルテを使いたいなら、大山を外野に定着させるかスタメンから外すぐらいの覚悟が必要だろう。それよりも外野の候補は他にもいるはず。今季のようにポジションが定まらない状況は選手にとって、居心地の悪いものだ。守備がしっかりすれば、打席にも余裕が出て、いい影響を与える。

この試合で、もうひとつ気になったのは、「積極性」のとらえ方だ。初回に打線がつながって逆転に成功したが、2回以降は淡泊な打撃に見えた。なぜ淡泊に見えるかと言えば、早いカウントからの打ち損じが目立つからだ。初球からバットを振ることが積極的と前向きにとらえられることもあるが、タイミングを外されての凡退では、ほめられるものではない。7回裏に代打島田が初球を打ち、中飛に倒れたが、先頭打者はなんとしても塁に出ることが仕事だ。いい当たりだったから、ヨシではない。

勝てないチーム状況では打者は勝ちたい、打ちたいの気持ちが出過ぎて、いい方向にはいかない。首脳陣は選手起用や戦略において、しっかりとした方針を示して、打線を立て直していくしかない。

阪神対広島 8回裏阪神1死二、三塁、ロハス・ジュニアは三振に倒れる(撮影・上田博志)
阪神対広島 8回裏阪神1死二、三塁、ロハス・ジュニアは三振に倒れる(撮影・上田博志)