阪神が逃げ切りに失敗して、今季5度目のサヨナラ負けを喫した。連勝は2で止まった。12試合連続無失点中だった抑えの岩崎優投手(30)が乱れ、1-0の9回に逆転サヨナラを許した。日刊スポーツ評論家の山田久志氏(73)が解説した。

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痛恨のサヨナラ負けだった。DeNAに連勝して乗り込んだ神宮だが、ストッパー岩崎が打たれ、一瞬で勝ちゲームがおじゃんになった。

山田 DeNA戦がそうだったように、今シーズンの阪神は点差を広げて逃げ切るパターンの勝ちが目立っている。でも、打ち合い、競り合いにもろい。そもそも糸原のソロ本塁打だけで、2、3人ならまだしも、計5人のピッチャーでその1点を守って逃げ切るのは難しかった。また阪神打線は中村にやられた感が強かった。

これで阪神の1点差ゲームは5勝14敗。1試合2発などでDeNAをカモにした4番佐藤輝がさっぱりだ。得点圏に走者を置いた2度の機会は、4回が二ゴロ併殺打、6回は高めのツリ球に3球三振で4タコだった。

山田 この一戦だけではなく、阪神にとっては中村がやっかいな存在になってきている。中日、ヤクルトなどの佐藤輝に対する“インコース攻め”は徹底している。そこを突いて打たれるのは仕方がないというチーム方針だろうから、ピッチャーもいきやすい。佐藤輝もそれにはまってボール球に手を出すものだから相手の思うつぼだ。ただ佐藤輝の場合、ひとつ間違えば1発というのが魅力だから良しとしてあげないといけないのかもしれない。近本を含め、チーム全体が中村のリードに狙い球が絞りづらく、ほんろうされた。それに8回に盗塁死でチャンスの芽をつぶしたのはもったいなかった。

8回1死から代打高山が四球を選んで、代走熊谷が登場。ヤクルト清水が打者近本に投じた初球に二盗を試みたが失敗した。近本も空振り三振に倒れた。

山田 あそこは「行けたら行け」だろうが、熊谷は「行くぞ、行くぞ」と見せかけて行かないのも、1つの手だ。そうすると一、二塁間がさらに空くし、右打者ならまだしも、左の近本だからゲッツーもない。もらったチャンスで、打線は上位に回っていってるわけで、相手にプレッシャーをかけたかった。そのあたりのきめ細かさも必要だろう。マルテも復帰し、オーダーは固定されてきた。個々が調子を上げていけば“線”になってくる。

【取材・構成=寺尾博和編集委員】

ヤクルト対阪神 4回表阪神無死一、二塁、併殺打に打ち取られる佐藤輝(撮影・狩俣裕三)
ヤクルト対阪神 4回表阪神無死一、二塁、併殺打に打ち取られる佐藤輝(撮影・狩俣裕三)