阪神は最大6点差を終盤にひっくり返し、甲子園凱旋(がいせん)の新庄BIGBOSS率いる日本ハムを相手に劇的勝利を飾った。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(40)は手に汗握る熱戦を見届けた後、敗れはしたものの日本ハム打線の豊富な得点パターンに納得。阪神打線にとって「隠れたヒントになった」と表現した。【聞き手=佐井陽介】

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阪神にとっては最大6点差をはね返す劇的勝利となりました。3本塁打を放った大山選手の貢献度は説明するまでもありません。とはいえ打線は水物。誰もが毎試合打ち続けられるわけではありません。そう考えれば、阪神打線は多彩な得点バリエーションが目立った日本ハム打線を参考にするのも有りかもしれません。

日本ハムの若い選手たちには新庄BIGBOSSの考え方が浸透していました。序盤からファーストストライクを伸び伸びスイング。1回無死二塁では3番野村選手が追い込まれた後、当たり前のように二ゴロで走者を進めました。そして、1死三塁では4番清宮選手が強引にいかず中犠飛。アウトを取られても走者を動かす。そんな意識づけが徹底されていると感じました。

BIGBOSSはキャンプ中から「空振りを恐れるな」「追い込まれたら進塁打」と口を酸っぱくして選手に伝え続けてきたと聞きます。その上、左打者の清宮選手には甲子園戦に向けたアドバイスまでしていたそうです。右翼に引っ張っても浜風がある。中堅から左翼方向に。的確な助言もあったから初回のような攻撃が成立するのでしょう。

目を見張ったのは3回の攻撃でした。無死満塁からスクイズで1得点。フォースアウトがある場面で初球からスクイズを選択しただけでも驚いたのに、なおも1死満塁から今度はランエンドヒットの適時打で2得点です。定石ではない得点パターンが引き出しにあると、相手チームは同じような場面でより大きな重圧を感じるものです。

一方の阪神も苦しんだ時期と比べれば、打線が点ではなく線になってきているように感じます。5点を追う5回には代打北條選手が内野安打タイムリーを放ち、4点差の6回にも2四球を絡めて2点を追加。点差を離されても地道につないで1点ずつ返していく。そんな姿勢は大切です。

同点の8回1死満塁ではファウルになりましたが、1番島田選手が意表を突くスクイズも試みました。こういった選択肢も今後は1つの手になっていくのではないでしょうか。チームを浮上させていく上で、新庄BIGBOSSが披露した豊富な得点パターンは、阪神にとって隠れたヒントになったような気がします。(日刊スポーツ評論家)