再開するリーグ戦で、上位進出を目指すトラに必要なものは何か。阪神一筋22年、4番や代打の神様として一時代を築いた日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏(52)が緊急提言です。4日間の交流戦ブレークを経て、17日のDeNA戦(甲子園)からリーグ戦が再開。すべては野手陣の奮起にかかっていると熱いゲキです。【聞き手=松井清員】

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阪神は交流戦3連勝フィニッシュで12勝6敗と勝ち越し、再開リーグ戦に弾みをつけました。開幕当初は17戦1勝で最大16あった借金を6まで減らして最下位も脱出。Aクラスの広島まで2ゲーム差の4位に浮上しました。すべてはリーグ1位の防御率を誇る投手陣に尽きます。

青柳がコロナの出遅れを取り返す無双の活躍で、西勇ら他の先発陣も状態が良い。アルカンタラらから湯浅、岩崎につなぐ勝利の方程式も確立し、安定した戦いができるようになりました。最近大敗が減ったのもその象徴です。

となれば、再開するリーグ戦でチームが浮上するポイントは野手陣に尽きます。1点差試合が10勝17敗で完封負けが15回、うち0-1負けが半分の7回もあります。この数字が何を表すかというと、良い投手に当たるとからっきしで、先発の調子が悪かったり、リリーフの格が落ちたりすると点差を広げて勝つ。総得点が総失点を21点も上回りながらBクラスにいるのはそのためです。でも良い投手も攻略していかないと、絶対ここから上には行けません。

一番の課題は先制されると8勝25敗1分けで、逆転勝ちがリーグ最少タイの9回という淡泊さです。1点でも先に取られると粘れない。だから1点差負けや0-1負けが多くなる。今は投手陣が頑張っていますが、いずれ我慢の限界がきます。暑い夏場、バテもきますから。野手陣はこれまでつくった大きな借りを今こそ返さないといけません。

キーマンは野手全員です。相手が良い投手の時ほどとにかく粘る。1球でも多く投げさせる。走者は走るぞと見せかけ、注意力を分散させて甘い球を引き出す。自分がされてイヤなことを仕掛けることが重要です。チームが束になって、ジャブの連打で泥臭く1点をもぎ取りにいく。先制試合は21勝10敗です。阪神は投手陣が良いだけに、1点を先に取るか取られるかで展開が大違いです。1点差試合をモノにするには、この積み重ねしかありません。

阪神は首位を走った昨年も交流戦を6連勝フィニッシュしましたが、再開したリーグ戦で失速した教訓があります。4日間のブランクを経て同一リーグの戦いに戻ると、セの各チームも交流戦の状態とは別物と考えるべきです。そのためにはあと2ゲームでAクラスとか、あと6で借金完済とか、目先の数字を追ってはいけません。大事なのはいかに苦手の1点差試合を競り勝っていくか。競り勝つことで、自然と借金が減り、5割も見えてAクラスに浮上でき、初めてその上も見えてくる。とてもしんどいことです。でもヤクルトは1点差試合が13勝5敗です。それを実行しているから今年も首位を走れている。良いお手本があります。