悲観すべき敗戦ではないだろう。主軸、特に4、5番の打撃の内容を見る限り、今後も安定した戦いができるはずだ。

個別に分析しよう。本塁打を量産している大山は、3四球と歩かされたが、最終回の打席に調子の良さを感じた。5球目のファウルは左翼ポール際まで運んだが、内角球に対して、バットが最短距離で出ていた。大山は構えの時に、バットのヘッドを頭よりも前に出している。振り出してから、ヘッド部分が頭よりも後ろに遠回りしてとらえようとすれば、直球にタイミングが合わない。今の状態ではその心配はなく、直線的にヘッドをボールにぶつけるイメージで振っている。17日のDeNA戦3回の本塁打がまさにそうで、胸元の内角直球を左翼席に運んだ。こういう打撃ができるのは強い。好不調の波がある打者だが、しばらくは好調を維持できるだろう。

4番を打つ佐藤輝にも、昨年からの成長を感じた。7回の打席で追い込まれてから、左腕エスコバーの直球を2球カットし、最後は左翼に流し打った。昨年ならば、力いっぱいのフルスイングで空振りしていた。今年は大山同様に、最短距離でバットを出すことを心がけている。軽く振っているように見えるが、ボールに対してのアプローチがよく、空振りが減ってきている。

その一方で気がかりなのが、近本だ。毎試合ヒットは出ているが、バットが下から出ており、ゴロの凡打が多い。構えの段階でバットのヘッドは大山と同じ位置にあるが、ボールの軌道にバットを合わそうとして、遠回りしている。緩い変化球ならタイミングを合わせられるが、直球への対応は苦しいだろう。中野も同じ傾向が見られる。近本も最短距離を意識して、ジャストミートすべきだ。

投手でいえば、8回に湯浅が勝ち越しを許したが、宮崎、桑原に直球を打たれ、神里との対戦では心理的に直球が投げづらくなった。フォークの失投を痛打されたわけだが、あくまで持ち味は直球で、最も失投の少ない球種でもある。かわすタイプではない。自信をもって押していくべきだ。とはいえ、負け投手になるのも勉強。チーム状態が良くなれば、登板も増える。この経験を生かしてほしい。

6月は主軸を固定して、打線は上り調子になった。今後も「最短距離」を意識すれば、大崩れはしない。投手陣も状態はいい。ヤクルト以外の球団は決め手を欠いており、上位定着で戦える。(日刊スポーツ評論家)

阪神対DeNA 7回裏阪神1死二、三塁、大山は申告敬遠で出塁。手前は次打者の糸原(撮影・前岡正明)
阪神対DeNA 7回裏阪神1死二、三塁、大山は申告敬遠で出塁。手前は次打者の糸原(撮影・前岡正明)