首位西武が大勝で貯金を再び2ケタに戻し、2位ソフトバンクとのゲーム差を3に広げた。初回に2点を先制されながら、1点差で迎えた4回に4番山川の3ランなど5連打6得点で一挙逆転した。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)は「西武打線は点の取り方を知っている」と表現。浅い犠飛で山川をタッチアップさせたスタイルに、首位チームの強さを実感した。【聞き手=佐井陽介】

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今年の西武は現在首位に立っているだけあって、点の取り方を知っているチームです。象徴的だったのが2点を追う2回裏の1得点でした。スタートは無死一塁で5番栗山選手が一ゴロを転がした場面。ロッテ守備陣のミスで併殺打をまぬがれると、ここから一気に得点モードにギアチェンジしたように映りました。6番愛斗選手の左前打で1死一、三塁。ここで7番川越選手が中堅左に浅い飛球を打ち上げるのですが、三塁走者の山川選手がスタートを切ったから驚きました。

ロッテ守備陣もまさかスタートを切られるとは想定していなかったのでしょう。遊撃手のエチェバリア選手はカットに入らず二塁ベース付近へ移動。中堅手の福田選手は直接の本塁送球を選ばず、二塁手の中村奨吾選手に返球。結果的にカットマンとなった中村選手の位置は二塁方向にズレていて、捕球地点とホームの直線上ではありませんでした。三塁コーチャーはロッテ守備陣の動きを一瞬で把握して「GO」を判断したのでしょう。結果は間一髪のホームイン。この1点で流れが変わったのは説明するまでもありません。

6得点した4回も、2死無走者から四球を皮切りに5連打。相手にダメージを与える攻め方が印象的でした。1番外崎選手は2死三塁で大きなファウルの直後、セーフティーバントを試みて揺さぶりをかけています。左打者は走者一塁もしくは一、三塁から右方向に引っ張り、「一、三塁」を作り続けることで投手に重圧を与えていました。もちろん4番山川選手の3ランの価値は誰の目にも明らかですが、それまでの過程にも強さが際立った形です。

豪快なイメージも強い西武打線ですが、1人1人の打率はそこまで高くはありません。それでも得点できるわけがあるということです。相手にミスが出たら畳みかける。得点するための最善策を選ぶ。点の取り方を知っているチームは、勝つ確率が高くなるものです。(日刊スポーツ評論家)

西武対ロッテ 2回裏西武1死一、三塁、川越の浅めの中犠飛で、タッチアップで生還した山川は笑顔でナインとハイタッチ(撮影・浅見桂子)
西武対ロッテ 2回裏西武1死一、三塁、川越の浅めの中犠飛で、タッチアップで生還した山川は笑顔でナインとハイタッチ(撮影・浅見桂子)