中日は28試合を残して借金10、3位阪神まで3・5ゲーム差の最下位。総合的な戦力から見れば、この状況をどう評価するか難しいところですが、可能性のある限り3位を目指して戦い抜くことが必要でしょう。

そんな中、野手では岡林を筆頭に若手の芽が伸び始めていることは楽しみな材料です。投手では20歳の右腕・高橋宏斗の潜在能力の高さはずぬけています。ここまで15試合に登板して4勝5敗、防御率2・34は高卒2年目の投手としては素晴らしい数字です。

打者を圧倒するストレートと鋭く滑り落ちるスプリット。何より常に向かっていく姿勢が本格派投手としての資質の高さをうかがわせます。近い将来、球界を代表する投手となる可能性が高いからこそ、今、留意すべき点を指摘したいと思います。

今季は常に10日前後の登板間隔で起用されています。成長過程の投手への配慮は十分、感じますが、今季はもちろん、3年目となる来季も間隔への配慮より、球数に比重を置いた起用が望ましいと考えます。

昨年、高卒2年目でチームトップの9勝と活躍したヤクルト奥川投手も3年目の今季はコンディションとの戦いが続いているようです。十分な登板間隔と段階を踏んだ球数とイニング起用をされながらも、日本一につながる1球1球の負荷は大きかったのでしょう。今のプレーヤーの体は合理的なトレーニングが浸透してパワーとスピードはありますが、芯の強さという点では未完です。監督、コーチら首脳陣が肝に銘ずべきは「育てなきゃいかん」ではなく「つぶしちゃいかん」です。彼らはつぶれなければ、ほうっておいても育ちます。

もうひとつは全投球の約3割を占めるスプリットの功罪です。ここまで92回1/3で108個の三振を奪っている原動力であることは確かでしょう。奪三振率「10・53」という数字も素晴らしいわけですが、この球種の落とし穴は肘への負担が大きいこと。将来が楽しみな投手であるがゆえに、今は5年後、10年後を見据えた球数管理と配球に取り組んで欲しいと願っています。(日刊スポーツ評論家)