両チームとも負けられない試合だったが、日程的に余裕のある西武と過密スケジュールのソフトバンクの差が勝敗を分けた。

まずソフトバンク石川の投球には疲れを感じさせた。もともと真っすぐが荒れ球気味で、大きく曲がるパワーカーブとのコンビネーションで抑えるタイプ。しかし、この試合は真っすぐが高めに浮き、キレもなかった。普段は空振りの取れる高めの直球が見極められ、申告敬遠を入れて6四球。それでも5回4失点。先発投手の責任イニングを投げていた。

精神的な負担もあっただろう。連戦で中継ぎの負担を減らしたい気持ちもあったと思う。野手も甲斐が送りバントを失敗したり、周東も単独スチールでアウトになった。説明するまでもないが、甲斐はバントがうまいし、周東は球界屈指のスピードを持っている。連戦の疲れ。大事な試合の重圧。それらが出た印象だった。

一方、西武高橋は好調だった。この1カ月、石川とはほぼ同じ間隔で先発しているが、元気いっぱいで気合も十分。石川より下半身を使って投げられるし、体も大きく馬力もある。見事なピッチングだった。

ただ、西武の野手陣には隙があった。7回表、デスパイネにソロを打たれた直後、中村晃の打球は一塁線への強烈な打球だった。この打球を山川が好捕してベースカバーに走ってきた高橋にやや長めのトスをしてアウトにした。一見いいプレーに見えるが、先発して7イニング目に入っている先発投手を、なるべく走らせないような配慮は感じなかった。終盤に入った投手というのは「少しでも楽にしてやりたい」という野手の気持ちに勇気を感じるもの。山川のキャッチ後は余裕があるように見えたが、自分でベースカバーに入る姿勢は見られなかった。試合間隔があいて元気な野手が、普段の登板間隔で投げている投手をカバーしてやるべきだった。

その裏、無死一塁から3番の森が送りバントを決めたが、一塁へはジョギングのような走りだった。別に全力疾走で走れとは言わないが、大事な試合であり、まだ3点差。少しでもプレッシャーをかけようという意識は感じなかった。

ミスもあり、連戦が続いたソフトバンクだが、必死さは伝わった。この姿勢が短期決戦での強さにつながっているのだと思う。逆になかなか短期決戦を勝ち抜けない西武には、必死にプレーし続けられない印象がある。優勝を争うソフトバンクと3位争いをする西武の差なのかもしれない。(日刊スポーツ評論家)

西武対ソフトバンク 7回表ソフトバンク1死一、二塁、川瀬を併殺に仕留めた高橋はガッツポーズ(撮影・浅見桂子)
西武対ソフトバンク 7回表ソフトバンク1死一、二塁、川瀬を併殺に仕留めた高橋はガッツポーズ(撮影・浅見桂子)