新井カープのキーマンは参謀役-。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)が広島の宮崎日南キャンプ第1クールに“潜入”した。阪神時代の先輩でもある就任1年目の新井貴浩監督(46)を直撃し、実際にグラウンド上で新生チームの空気も体感。4年連続Bクラスからの浮上へ、こちらも虎の先輩で新任となる藤井彰人ヘッドコーチ(46)の「指導経験値」と「洞察力」をポイントにあげた。【取材・構成=佐井陽介】

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実際にグラウンドに下りられたことで、カープの雰囲気の良さを肌で感じることができました。選手は皆、ハツラツとしていて声が出ている。フリー打撃やロングティー打撃など「10カ所打撃」に参加する若手にしても、自発的に振り込んでいる空気が充満していました。明るく楽しそうだけど、手を抜いているわけではない。これはもちろん新井監督の人間力、コミュニケーション力によるところが大きいのでしょう。

一方で、新井監督が指導者経験ゼロの状態で指揮を執る事実からも目をそらすわけにはいきません。選手としては五輪やWBCといった世界の舞台も経験していますが、こと指導者に限れば初体験ばかりとなる就任1年目。目まぐるしく状況が揺れ動くゲームで采配を振っていく中、注目したいポイントが藤井ヘッドコーチの「指導経験値」です。現役時代にセパ両リーグでプレーし、引退後は独立リーグ、阪神2軍、阪神1軍で計7年間コーチを歴任。人を引き連れる経験の豊富さは、必ず新井監督の支えとなるはずです。

自分にとって、藤井ヘッドコーチは阪神時代に苦楽を共にさせてもらった先輩でもあります。食事の席などでも何度となく野球観をぶつけ合いましたが、考え方は非常にシンプルです。「これを言ったらマスコミにたたかれるかな?」とか変に飾ったり取り繕ったりしない。「年上だからOK」「活躍しているからOK」といった忖度(そんたく)もなしに「ダメなモノはダメ。いいモノはいい」と言える。その一本筋が通っているスタイルは、選手に好影響を及ぼすことでしょう。

楽天では野村克也監督の野球も吸収するなど、捕手出身ならではの視野の広さ、先を読む力の持ち主でもあります。就任1年目の新井監督にとって、気心の知れた同学年の参謀役ほど頼れる存在は他にいないのではないでしょうか。日南キャンプではすっかりチームに溶け込んでおり、すでに選手への声かけや指導にも違和感は感じられませんでした。昨季まで4年連続でBクラスに沈んでいるカープ。藤井ヘッドコーチの「指導経験値」と「洞察力」が再浮上のカギを握りそうな予感がします。(日刊スポーツ評論家)