このキャンプ取材でどうしても見ておきたかったのが、広島坂倉将吾だった。
DeNAとの練習試合は、新井新監督にとって初の対外試合。スタメンマスクの坂倉を、真夏を思わせる日差しを浴びながら、最後まで見させてもらった。
まず前提として今年の広島は打線に力がある。新外国人デビッドソンも対応力に可能性を感じた。また、投手陣は森下と床田が故障明けで、先発スタッフは万全とは言えないものの、この日先発した遠藤は、手足の長さを生かした球持ちの良さが光る。
まっすぐと変化球の腕の振りが同じなのもいい。緩急をつけ、ストライク先行のピッチングができれば、大瀬良、森下、九里の3本柱に食い込む存在になり得るとの好印象を受けた。
投打に可能性がある広島において、何がもっとも注目していたかと言えば、今年から捕手に専念する坂倉だった。これまで打力を生かして、三塁や外野を守ってきたが、もう、捕手1本で勝負する節目のシーズンだ。三塁にはデビッドソンがいる。厳しく言えば、坂倉に逃げ場はない。
捕手としてブランクがあるのは承知の上で指摘するなら、キャッチングでポロポロしている。4回無死二塁、4番ソトでパスボールで三進を許し犠飛で失点。2番手アドゥワのスライダーだと思うが、ここは絶対に止めなければならない局面だ。
ここから私が指摘するのは、坂倉には耳の痛いことになるだろうが、あえて言わせてもらう。イニング間の送球は右へそれたボールがあったし、2回2死一塁から桑原が二盗を狙った場面でも、送球はショートバウンドしていた。打者が三振したため、先に攻撃終了となっていたが、もしも送球を緩めていたのなら、打者への結果球は関係なく、刺す覚悟で投げなければならない。
走者がいても、いなくても、イニング間の練習だろうが、本番だろうが、今の坂倉には関係ない。1球たりとも無駄にはできない。全部試合中だと思って、全てノーミスで取り組む強い覚悟がなければ、これまでのブランクが言い訳になってしまう。
開幕までに時間はない。それまでにすべての投手から信頼されるキャッチング、ブロッキング、スローイングを、常に意識して実践していかなければ。
一球入魂。この言葉を坂倉に贈る。その積み重ねが、次回WBCで「正捕手坂倉」につながると、私は信じる。(日刊スポーツ評論家)