延長10回に勝ち越した阪神だが、大きな勝負の分岐点は、村上の交代機だった。岡田監督が7回まで完全投球を続ける村上に代打原口を告げた采配だ。

真弓 まずは勝てて良かった。監督として「どうしたら、このゲームに勝てるのか?」を考えた末の思い切った判断だったと思う。確かに7イニングを投げきった村上だが、球のキレが若干落ちてきていたのも判断材料だったかもしれない。それよりも一番勝つ確率の高い作戦が村上の交代だった。それが監督の決断だったはずだ。記録(完全試合)より勝利? 当然だと思う。もちろん後ろにいいピッチャーがいて、勝ちパターンがあるわけで、わたしには理解ができた。

ただその裏、代わった石井が、巨人4番の岡本和に投じた初球ストレートを左中間スタンドに本塁打を突き刺されて追いつかれた。

真弓 監督の心境? そりゃあ表情には出せないが、「しまった」とは思っているよ。パーフェクトを消してまで勝ちにこだわったが、いきなりホームランを打たれた。でもなにもリードされたわけじゃない。まだ同点だ。岡田監督はここからがしぶとい。それは得点にはつながらなかったが、代打、代走を繰り出した9回のたたみかけるような攻撃にも表れた。佐藤? 今苦しんでいることは無駄にはならない。

1985年(昭60)にリーグ優勝、日本一を遂げた同じVメンバーで元阪神監督の真弓氏は、岡田野球を知り尽くしている。

真弓 あまり直接選手に声を掛けたりしないタイプだとは思うが、監督が動いて勝つことで選手は“オカダの考え”を受け止め、分かってくる。大きな意味をもつ1勝になった。

【取材・構成=寺尾博和編集委員】

巨人対阪神 7回表、代打を送られた阪神村上はベンチから引き揚げる(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 7回表、代打を送られた阪神村上はベンチから引き揚げる(撮影・加藤哉)
巨人対阪神 巨人に勝利し、4セーブ目を挙げた阪神湯浅(左)が差し出すウイニングボールを断る村上(撮影・江口和貴)
巨人対阪神 巨人に勝利し、4セーブ目を挙げた阪神湯浅(左)が差し出すウイニングボールを断る村上(撮影・江口和貴)