両チーム合わせて11本のホームランが乱れ飛ぶ“空中戦”は、ヤクルトが長岡のサヨナラ逆転本塁打で締めくくった。今試合の先発は、WBCメンバーだったヤクルトの高橋とDeNAの今永で始まっただけに、投手戦の予想を覆す試合展開になったが、首位にいるDeNAの「隙」が見えた試合だった。

7回表に京田と牧がソロを放ち、その後も1点を加えて5点差になった。正直に言えば、ここで試合は決まったと思った。しかしDeNAの7回裏の守備を見て「おやっ」と感じた。

守備固めに入ると思ったのだが、守備の変更は9番の三嶋の代打に出た大田に代わって投手のウェンデルケンに代わっただけだった。確かにまだ8回と9回の攻撃があり、上位打線に打席が回ってくる。不調だったソトに今季初本塁打が出た試合であり、感じのいいときに「もう1打席打たせたい」という思惑もあったのだろう。

それでも試合終盤で5点差リード。より確実に勝つことを考えるなら、攻撃よりも守備を重視すべきだろう。代打に出た大田か神里を左翼に入れ、佐野は一塁へ。一塁のソトのところへ、投手のウェンデルケンを入れると思っていた。

得点に結び付かなかったが、7回裏2死から村上の左翼へのフライを佐野がキャッチできずに二塁打になった。フェンス手前の飛球で、佐野じゃなくても捕れない可能性はあるが、うまい外野手ならアウトにできただろう。結局、このイニングは無得点に終わって問題はなかったが、8回裏も守備固めはしなかった。

8回裏、先頭の中村にソロを打たれた後だった。オスナの当たりは一塁線へのゴロだったが、ソトがグラブに当てながらはじいてしまった。記録は内野安打だが、これもうまい一塁手なら捕れていた可能性がある。アウトにできていれば、3ランを放った浜田には、このイニングで打席は回ってこなかった。

9回裏の守りは、目まぐるしく守備固めした。代打に出た神里をライトに起用。ライトだった関根が一塁に回った佐野に代わってレフトへ。三塁だった京田がショートに入ってサードは柴田。一塁手のソトはベンチに下がり、ショートの大和に代わって投手の山崎が入った。

これが守備力を重視した布陣なのだろう。それなら7回裏でもよかったし、最低でも8回裏の守りは守備固めをしなければいけない。それでも結果は変わらなかったかもしれないが「勝つための最善策」が遅れたのは否定できない。派手なホームラン合戦に見失いがちだが、小さな「隙」が手痛いサヨナラ負けの確率を高くしてしまった。(日刊スポーツ評論家)