21年のドラフト1位・小園が、プロ入り3年目でデビュー戦を迎えた。入団当初はヒョロッとした体形で、良くなるのは時間がかかるタイプだと思っていた。そんな右腕が予想より早くデビューし、どんな投球をするのか楽しみにしていた。しかし、プロの世界はやはり甘くなかった。

まず、小園の投球を振り返ってみよう。今試合では真っすぐ、カーブ、カットボール、スライダー、スプリットを投げていた。一番、目を引いたのはカーブの制球力がいいところ。コースにも投げ分けられていたし、ストライクがほしいときのカウント球に使えていた。

球種が多いのは悪いことではない。しかし、軸になる真っすぐの精度と球威をもっと磨かないと、他の球種は生きてこない。右打者のアウトコースと左打者のインコースへの真っすぐに自信がないのだろう。プレートの一塁側を踏んで投げているように、シュート回転して甘くならないように、カットボールやスライダーを投げるケースが多かった。

初回2死一塁、中田にはカウント3-1から外角にカットボールを投げ、四球になった。続く細川に対してはカウント1-1から外角へのスライダーをレフト前タイムリーとされた。このケースで外角の真っすぐで勝負できるようになれば、ピッチングの幅は広がる。力のある打者は真っすぐに力がないと、変化球のボール球は振ってくれないし、甘く浮いた変化球はヒットゾーンに運ばれてしまう。

状況判断もまだまだ勉強が必要だろう。2回無死一、二塁、投手の松葉に送りバント(記録は内野安打)を決められたが、外角を狙ったボールを3球続けてしまった。松葉は左打者で、三塁側に決めやすい球だった。バント処理にしても、マウンドからすぐに三塁側に下りていない。三塁側にバントしやすい球を投げ、三塁側で打球処理をする基本がおろそかになっている。結果的に送りバントを決められるのは仕方ないとはいえ、防ぐためのセオリーができていなかった。

2回1死満塁、田中に対して2ストライクに追い込みながら、カーブを投げてバットに当てられて3点目を奪われた。三振だけはしないようにバットに当てようとしている打者に対し、球速のないカーブはバットに当てやすい球種になる。捕手の松尾の課題にもなるが、若いバッテリーの弱点が出てしまった。

デビュー戦で見えた小園の課題点を挙げさせてもらったが、私自身も高校卒業2年目のデビュー戦は敗戦処理登板。四球とヒットの後にラインバックに3ランを浴びた。捕手までが遠く感じ、サインも分からなくなってパニック状態だったのを覚えている。結局、このシーズンの登板はこれだけ。しかし悔しさをバネに翌年には8勝を挙げた。

当時の私と比べれば、小園ははるかにレベルが高い。今試合は味方の守備で足を引っ張られたし、初登板の緊張もあっただろう。もちろん、この試合だけで力量を測るつもりはない。今試合で出た課題はしっかり受け止め、次回からの登板に生かしてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)