「日給8000円」の元とび職人が「ジャイアンツドリーム」を成し遂げた。巨人増田大輝内野手(24)は7月28日、青山とともに育成契約から支配下選手契約を勝ち取った。推定年俸は290万円から420万円にジャンプアップ。「ホッとしたのが一番。やっと第1歩が踏み出せた」と声を弾ませた。

 四国IL・徳島時代に15年育成ドラフト1位で指名を受けた。背番号3ケタの育成選手契約。それでも徳島に妻子を残し、単身で上京した。「支配下契約を勝ち取ってから家族を呼ぶ」ことを自らに課し、野球に没頭した。テレビ電話で妻子の顔を見るたび、寂しさは募った。将来への不安に襲われた夜も少なくない。

 そんなつらい時に役立ったのが、徳島時代に経験したとび職の日々だった。工事現場の足場を組んだり、高いところに資材を運んだり。午前8時から午後5時まで働き、日給8000円を手にする毎日が半年続いた。「収入は1カ月で15万円いったらいい方。メンタルを鍛えられました」。歯を食いしばって耐えた期間があるからこそ、プロ野球選手になれるチャンスは簡単には手放さなかった。

 支配下選手契約によって給料は大幅にアップし、妻と1歳10カ月の長男と一緒に住む夢も実現は可能だ。それでも増田は「それを目標にやっていたので呼びたい気持ちはすごくあるけど、そこは妻とゆっくり話し合って決めたいと話しています」と慌てずに、現実を直視した。「1軍に立ってプレーして始まると思う。人一倍声を出して、元気出して、泥臭く、新しい風を出せるようにやっていきたい」。ジャイアンツドリーム本編の幕は今、開いたばかりだ。【巨人担当 浜本卓也】