正直、驚いた。11月12日に侍ジャパン対日本ハムの練習試合が行われることを聞いたときの心境だ。日本ハムは例年、秋季キャンプを沖縄・国頭で行っている。その日程を短くして切り上げ、わざわざ宮崎まで移動して試合をするのだ。チーム全体で移動するため、単純計算でも100万円以上の出費になる。

 侍ジャパンの監督が球団OBの稲葉篤紀氏だということも、理由のひとつではあるだろう。だがそれだけではなく、日本ハムの球団首脳、栗山監督は、常日頃から日本野球界のためにどうすればいいのかを考えている。結果的に大谷が出場できなかった今春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)も、日本が世界一を獲得するために、そして日本球界を盛り上げるために、最後まで出場の可能性を模索した。登板は無理でも、野手なら…。同じことは、右手中指にマメができた16年のオールスターでもあった。

 大谷の「1番投手」としての起用や今季の本拠地最終戦で「4番投手」を実現させたのだって、頻繁に行われるトレードだって、本人はもちろん、野球界のためにならないものは進めない。また過去にはドラフト候補に、女子野球選手がリストアップされていたこともあるという。これだって話題づくりだけではなく、野球の裾野を広げ、ファンや競技人口を増やしたい思いが込められていたはずだ(実現しなかったのが残念)。

 先日のドラフト会議。7球団競合の末に、日本ハムは早実・清宮幸太郎の交渉権を獲得した。公表こそしなかったが、早くから1位候補にかためていた逸材だし、清宮本人も日本ハムは意中の球団のひとつだったと聞く。だが、どんなに相思相愛でも、ドラフトはくじ引きだ。だから、木田GM補佐が右手でガッツポーズをつくった瞬間、私が強く感じたのは「神様」の存在だった。野球と真摯(しんし)に向き合い、野球界の未来を本気で考えている方々は、やっぱり報われるんだ…。ダルビッシュがメジャー移籍した翌年のドラフトで、大谷が入団した(抽選ではないが)。今オフには大谷がメジャーに挑戦すると言われる。日本ハムには、球界を代表するようなスターが途切れることなく存在する。ここには「偶然」というだけではない、何かを感じてしまう。【日本ハム担当・本間翼】