4月30日、岐阜・多治見に住む父から電話の着信があった。普段はめったに連絡が来ない。

 私はZOZOマリンでロッテ対日本ハム戦を取材中だった。取材が一段落したところで電話を折り返した。身内に何かあったのか。ドキドキしていると、父の声はやたらに明るかった。「おい、松坂が勝ったぞ。すごいな。なんや、感動してまってのう。お前、見とったか?」。

 中日松坂が日本球界で12年ぶりの勝利を挙げていた。ナゴヤドームでの試合を地元テレビ局が中継。休日だった父は自宅で観戦していたそうだ。ひいきチームに入団したスーパースターの復活劇に感動したという。きっと松坂の西武時代やメジャー時代は、そこまで見ていない。ただ、高校時代から活躍するたびに新聞やテレビで目にして、足跡は知っている。必死に投げる姿に父は感化され、普段は連絡をしない息子に電話をかけていた。

 スポーツは、見ている人に元気を与えられるというが、その日は直に実感させられた。私が担当する日本ハムにも高校時代に甲子園で活躍した人を始め、魅力的な選手がいっぱいいる。活躍を報じることで、誰かに元気を与えられるかもしれないと考えると、身が引き締まる思いもした。

 最近、再び父から連絡があった。「お前の大学、大丈夫か?」。スポーツは楽しい夢を見させてくれるものであってほしい。日大出身の私は、切に願います。【日本ハム担当 木下大輔】

日大・内田前監督
日大・内田前監督