後悔したことがある。さかのぼること3カ月半。7月9日の西武戦前だった。平成の怪物・中日松坂が選出されたことから、オールスターに出場する各選手に「あなたにとっての怪物は?」に答えてもらう紙面企画があった。ロッテからは5選手が選ばれていた。

メットライフドームで試合前練習を終えた荻野貴司外野手(33)と内竜也投手(33)に聞いた。同い年のこの2人、故障がちなイメージを持っていた人も多いかもしれない。

内の答えはこうだった。

「悪霊です。霊感の強かった英二さん(落合元投手コーチ)に『お前が一番悪霊が憑いてる』って言われて。自分では何も感じないですけど、僕はそのせいでケガしてたと思ってるんで。英二さんが一緒に悪霊を持ってってくれたんじゃないですか(笑い)。今年は元気ですね」

荻野はう~んと考えた末に、こう言った。

「ケガ!うん、ケガって書いといてください」

その直後の試合だ。荻野が右手人さし指に投球を受けて骨折。全治2カ月で、初選出されて楽しみにしていた球宴の出場辞退が決まった。

答えが読めなかったとは言え、質問とケガのタイミングがあまりに悪かった。翌日のメットライフドームに荻野の姿はなく、内に「荻野、怪物にやられちゃいましたね」と言われた。いらんことを聞いてしまったなあと、ばつが悪かった。

1カ月後、浦和で荻野に会った。右手は固定されていた。勝手に罪悪感を抱いていたので「ずっと申し訳ないなと思っていて」と伝えた。すると笑顔でこう返された。「そういえば、あの日でしたね。きっと神様が『お前にオールスターはまだ早い』って言ってるんですよ」。笑ってそう言えるまでに、長い葛藤があったんだろうと思った。

10月初旬、再び浦和で顔を合わせた。「手、どうですか?」と聞いたら、グーパーして見せながら「こんな感じです。だいぶ良くなりました。今季は無理ですけどね」と笑っていた。記者の手前、いずれも笑顔をつくってくれたのだと思うのだが、どうしても寂しそうな表情に見えた。

だから22日、秋季練習初日の様子を見てホッとした。新チーム始動とも言える日に、同僚たちと並んで精力的にロングティーをこなす姿があった。

「2週間前からバットを持ち始めました。バッティングは、ちょっと前から放ってもらって軽めに打つくらい。投げるほうは塁間を軽めに、くらい。まだ痛いですし、衝撃を受けたら(骨に)響きますけど、11月中にはマックスでできるようになると思います」

バットを握っている時の笑顔は楽しそう、というより心底うれしそうだった。「今年の結果は悔しいけどしようがない。来年断ち切りたい? そうですね」。グラウンドでの全体練習を終え、室内へ自主練に向かう背中を見て、今度こそ怪物と無縁な1年になることを願った。【ロッテ担当 鎌田良美】