昨年9月22日、ロッテ福浦和也内野手(43)は通算2000安打を達成した。首痛と闘いながら、ギリギリでの到達だった。その時から引退の気持ちは、心のどこかにあったという。「そもそも2000というものに、世間が言うほどこだわりはなかった。父親は打ってほしいって期待してたけどね。それが、あれよあれよで打たせてもらえましたしね」。盟友でもあった西武松井稼頭央の引退も決まっていた。球団から、意思を聞かれていたら「辞めます」と言っていた可能性は極めて高かった。

だが、快挙達成となる安打を打った福浦を待っていたのは、山室球団社長からの厚いねぎらいだった。肩を抱かれ「おめでとう! 来年も頼むぞ!」と背中をたたかれた。それを受けて福浦も達成直後の高揚感からか「来年もやるつもりです」と直後の会見で宣言してしまった。

だが、その後に球団から提示された翌年の契約は2軍打撃コーチ兼務というものだった。「コーチを主で、と言われました」。1軍に上がれば、2軍のコーチはおろそかになる。熟慮した結果、やるからには本腰を入れて若手を鍛えたいと思うようになった。そのためには、なんとなく現役を続けながらというのはできなかった。「今年限りで」と線を引いて、立ち向かう決意をした。

もうひとつ、今すぐの引退を選ばなかったことには、田村や香月と自主トレを予定していたこともあったかもしれない。選手という立場がなくなり、コーチ専任となってしまえば2月になる前に一緒に練習することはルール上できなくなる。慕ってついてきた若手に、むげなことはできない。そういう配慮もあった。

そして、決定的なひと言。「今まで誰にも聞かれなかったから、答えなかっただけだよ」。質問を受けたのが、このタイミングだったから。そういった総合的な理由で、福浦の今季限りでの引退表明は今の時期になった。【14年ロッテ担当 竹内智信】